「子供を連れての海外移住は勇気がいる」と思われませんか?教育はしっかりしているのかな、学校に馴染めるかな、と不安を挙げればきりがありません。駐在の方は家族を連れて移住をするか、単身赴任を選ぶか、迷う方も多いでしょう。
訳があって2年間タイに移住したわたしと子供たち。ハプニングの連続でしたが、2年経つとずいぶん馴染んできたものです。
タイの学校ってどんな感じでしょう。タイの学校の特徴と、ハプニングを経て知ることのできた学校生活のいくつかを紹介してみたいと思います。※タイ1バーツ=約3.4円(2019年4月)
タイの学校制度
タイの義務教育は日本とほぼ同じです。
- プラトム :グレード1からグレード6 (日本でいう小学校)
- マタヨム :グレード1からグレード3 (日本でいう中学校)
その後は、進学したり、職業訓練コースに行ったりします。
- マタヨム:グレード4からグレード6 (日本でいう高校)
- マハ・ウィタヤライ(大学)
小学校の部のプラトムをタイ語で「ประถม」と書きますが、その頭文字の「ป」(ポー)に数字をつけて学年をあらわします。
たとえば1年生の場合、1はタイ語でヌンなので、ป.1と書いて「ポー・ヌン」と呼びます。
6年生だと、ป.6「ポー・ホック」となります。
中学校1年生だと、「ม」に数字をつけて、ม.1「モー・ヌン」となります。
入学手続きからハプニング
インターナショナル校には簡単に入れない
まず私は子どもたちを日本人学校ではなくタイの学校に通わせようと思いました。タイの学校となると、「インターナショナル・スクール」という選択肢しか思い浮かびませんでした。そこでインターナショナル・スクールを探して問い合わせに行くと、テストを受けるようにと言われました。
当時息子は小学校6年生で、日本にいたときに英語に力を入れていたわけではないので、テストを受けるということにとても不安を感じました。まずは英語と数学のテストを受けましたが、数学はある程度できたものの英語のほうはまるっきりダメでした。
結局インターナショナル・スクールには入学できないといわれてしまい、学年を下げて何とか入れてもらえるよう頼んでみましたが、だめでした。小学校低学年からでなければ、インターナショナル・スクールに入るのは難しいようです。
タイの私立学校に入る?
ところが、あとで「EP(イングリッシュ・プログラム)に入ったらどうか?」と学校側が提案をしてきたのです。EPとは何か?と尋ねると、結局のところ「タイの私立校にある英語強化コースだ」ということが分かりました。
これならテストも簡単だ!と学校側も薦めるのでひとまずテストを受けてみると、問題なく入学できるとの返答でした。
English Program(EP)ってどんなコース?
うちの子が通う学校は、外国人も通う現地の生徒のための私立学校です。3歳からの幼児部、小学校、中学校、高校の一貫校となっています。
インターナショナル ・プログラムと、イングリッシュ・プログラム(EP)つまり「英語強化コース」があるので、生徒数は2千人を超える規模の大きな学校です。
EPには、韓国をはじめ、外国から来た子供たちがたくさん通っています。EPでの授業は、小学校にあたるGrade1~Grade6までの間は、英語の授業が60パーセント、タイ語の授業が40パーセントとなります。
インターナショナル・プログラムは100パーセント英語教育で、その経営方針によりイギリス系だったり、アメリカ系だったりするようです。EPのほうはタイの私立学校ということで、タイならではの授業も含まれたものとなります。
タイならではの授業とイベント
ルークスア
毎週決まった曜日にある「ルークスア」。虎の子という意味のタイ語ですが、英語では「スカウト」と呼んでいる授業です。ボーイ(ガール)スカウトのスタイルで、スカーフを首に巻いた専用の服を着ます。学校の先生によると、目的は「リレーションシップ」とのことです。
実際の授業を見てみると、国家への忠誠をはぐくむための規律を学んだり、国旗への敬礼の練習などが多いようです。王国タイならではといえます。
ワイ・クルー
「ワイ」は、タイで挨拶をするときにする合掌のポーズです。「クルー」とは先生、教師のことです。6月16日は「ワイ・クルー」の日で、先生に敬意と感謝を表す特別な日となっています。花・線香・ろうそくなどでブーケを作り、先生に差し上げる儀式的な行事です。
タイの制服
制服はほとんどの学校のデザインが同じです。基準服は、男子は白のカッターシャツに紺色の半ズボン、女子はカッターシャツに紺色かチェック柄のスカートです。それぞれ胸のところに名前が刺繍してあります。高校生にあたる学年でも半ズボンです!1年中暑い国だからでしょうね。
そして、曜日ごとに着る服が違います。基準服の日は2日あって、あとは運動用のスタイルの日、スカウトの日、ポロシャツの日、といった具合に決まっています。日本のように、学校で体操着に着替える、ということがありません。
教室では上履きではなく靴下で過ごします。靴下のつま先と裏側の部分がグレーにデザインしてあるので汚れが気になりません。この靴下はどこにでも売ってあります。
登下校は大渋滞
ほとんどの子供たちは保護者に送り迎えをしてもらいます。タイではどこでも、その送迎時間のせいか、朝と夕方4時前後は大渋滞です。学校周辺は車でごった返していて、しかもピックアップトラックなどの大きな車に乗る人がたくさん。
歩道の整備が悪いので、歩いて登校するのはあまり安全ではありません。我が家は学校に近いのですが、子供が大きくなるまでは車で送り迎えをしようと思っています。
タイのユニークな学校行事
運動会はファッションショー?
「Sports day」日本でいう運動会。タイ語では「ギラー・シー」と言います。ギラーとは「Sports」で、シーとは「Color」という意味です。つまり4色の色にチーム分けをして競うわけです。
ピンク、黄色、赤、みどりの4色のチームに分かれ、みんなチームのカラーのポロシャツを着ます。
その色分けはいいのですが、当日観戦に行って驚きました!ピンクや黄色のドレスを着た女の子たちがゾロゾロと行進しています。
「え?これはファッションショー?」と思ってしまったのは私だけではないでしょう。男の子もそれぞれのカラーの服をまとって、プレートを持ったりして行進しています。その着飾った子供達に続いて、ポロシャツを着た子供達が行進してきました。
4色カラーの行進は延々と続きます。ドレスを着た女の子はなかなか速く歩けません。朝早く起きて、しっかりメークを決めてこの行進にのぞみます。とてもこの後スポーツをする子たちとは思えません。
でも、それでいいのだそうです。行進がメインの子、競技がメインの子と、役割が違います。競技には全員が出るわけではありません。私の下の子は、徒競走1回で出番はおしまい。あとは応援団といっしょに声援をおくっていました。
演劇発表会は本格的に
乾季に入った10月の半ばから、演劇の発表会の準備が始まります。毎日屋外で舞台の大道具を準備している姿が見られます。雨が降らないのでできるのでしょう。大きな板に背景などの絵を描いてペンキで塗っています。なかなか上手に描いているなぁといつも感心します。
演技の練習も講堂で毎日行われています。演技に出る学年と、大道具の準備をする学年、本番で裏方の仕事をする学年と、それぞれ分かれているそうです。プラトム6学年と、マタヨム6学年がそれぞれ一つずつの作品を披露します。ミュージカル形式の作品です。
本番は、街なかのショッピングモールの中にある劇場でおこなわれます。照明も舞台設定も本格的で、メインの演技をする子たちも気合が入っていてなかなかの見ごたえです。ストーリーやセリフの音声も、プロが準備したものだと思われます。
3年に1回まわってくる演技の学年の子供たちは、それぞれのクラスごとに衣装があって、やはり女の子たちはしっかりメイクを決めてやってきます。うちの子は、スパンコールが散りばめられたキラキラの衣装でした。こんなときにしか着られない衣装です。
1週間の授業
下の子は1年生の時から通っているのですが、1年生の初っ端から1日8時間授業で、びっくりしました。7時50分からの朝礼に始まり、夕方4時までです。
英語で学ぶ科目(基礎英語、応用英語、社会、歴史、数学)は、ネイティブの先生が教えています。タイ語の授業が毎日1時間ずつあります。その他、中国語や体育、美術、保健、道徳などの内容の授業が週に1回ずつあるようです。
コンピューターの時間に、3年生の息子はパワーポイントを使っています。
さらに、外国人のための「TSL」というクラスがあり、タイ語の基礎から教えてくれます。タイ語の授業のときに外国人はそこに移動して学びます。タイ語がある程度理解できるようになったら普通クラスに戻って授業を受けます。
イングリッシュ・プログラムの英語教育
小学校の部では、スペリングに力が入れられています。毎週スペリングテストを行い、90パーセント以上の正解率を要求されます。理科や算数も英語で教わるので、基本的な科学用語などを英語で勉強できるのはとても役立つと思います。
中学校の部に通う子供は、映画「ザ・トゥルーマン・ショー」についての討論をする授業がありました。トゥルーマンは現実の世界に戻ったほうが良い、というグループと、そのまま作られた世界にいたほうが良い、というグループに分かれて討論します。
興味深い意見を言えたら得点が高いのだそうです。うちの子も良い意見を言えるように家で一生懸命準備して、とても楽しそうでした。1年程で英語で意見を言うことができるようになるのは素晴らしいなと思いました。
タイの先生
いつも下校時に子供を迎えに行って感じることですが、タイの先生は帰宅時間が早いです。自分の子供を同じ学校に通わせている先生方が多いですが、4時の迎えの時刻に先生たちも子供を連れて帰宅しています。「先生もう帰れるの?」とびっくりしてしまいます。
日本なら考えられないことです。日本の先生はどうしてあんなに仕事が多いのでしょうか……。
そして日本のように先生からこまめな連絡はありません。子供から「来週から絵の具がいるって先生が言ってた。」と言われて、あわてて準備するということもよくあります。
ランチタイムは食堂で
お昼ご飯は、10軒ほどの店が入っている食堂で食べます。小学校の部では、クーポン券が毎日配られて、クーポンが使えるお店で好きな料理を選びます。中学校の部からは、各自がお金を払って買うのだそうです。
25バーツ(約85円)くらいで食べられるのですが、量が多くありません。主にタイ料理なので、学校に通い始めたころの子供たちは口に合わずお弁当持参でした。今はタイ料理にも慣れて、いろいろメニューを変えて食べているようで助かっています。
私立学校の学費
私の子供が通っている学校のEPの学費は、年間約30~40万円ほどです。インターナショナル・スクールの学費と、イングリッシュ・プログラムの学費は、約2倍の差があります。各学校で異なりますが、この学校の学費はほぼ平均的な価格です。
インターナショナル・プログラムの場合
- 入学金50,000バーツ(約170,000円)
- 2学期制での1学期分の学費:小学校の部105,000バーツ(約357,000円)、中学校の部115,000バーツ(約390,000円)
イングリッシュ・プログラムの場合
- 入学金10,000バーツ(約34,000円)
- 2学期制での1学期分の学費:小学校の部58,000バーツ(約197,000円)、中学校の部42,000バーツ(約143,000円)
親子で取れるビザ
子供たちの学校で親もビザをもらいます。子供たちはEDビザ(教育ビザ)、親はOビザ(家族ビザ)です。
学校のビザ担当者はビザの申請に慣れていて、イミグレーションのスタッフにも顔が知られているのでとても安心です。
主に必要な書類
- 親の口座の残高証明: 「Bank・Guarantee」と、「Statement」のどちらか、あるいは両方が必要です。
- 出生証明:「Birth・Certificate」です。親と子の戸籍を、日本領事館にて英文で証明してもらいます。
- 住所証明:日本領事館やイミグレーションで取得します。
- 学費納入の領収書
- パスポート
- 証明写真:写真店で撮影してもらいます。
- 通帳「Bankbook」
申請手続きの流れ
- 市役所「City・Hall」の申請(学校のビザ担当者がします。)
- ビザ取得のため国外へ(ラオス、マレーシア、日本など)
- 帰国してから3ヵ月後に、タイのイミグレーションで延長申請(1年)
- 1年ごとにイミグレーションでの延長手続き
注意事項
銀行の残高証明は、タイの銀行に本人名義の口座を持っていて、50万バーツの預金があることを証明する必要があります。最初の1年目は1ヵ月間、2年目からは3ヵ月間の預金の証明です。申請日がいつかをチェックして、預金期間が満たされているか確認する必要があります。
1年ごとの延長申請の時は、まず市役所の申請をしてからイミグレーションの手続きに入ります。市役所の申請に2週間くらいかかるそうなので、ビザが切れる約2ヵ月前にはビザ担当者に声をかけて、申請の準備について確認を取るといいです。
延長するかは自分の意志によるので、学校から聞いてくることはないと思います。期限は自分でしっかりチェックする必要があります。
タイではTM.30という住所についての報告用紙があり、延長手続きの時に必要です。私は子供のパスポートを切り替えたこともあってTM.30の用紙を外していたので、申請時に家に取りに帰るというハプニングもありました。
最初の延長手続きでは銀行の証明の期限がぎりぎりになるなど、慌てる出来事ばかりでした。何度も学校に足を運んで、担当者と連絡を取り合いました。延長時の手数料は1人に付き1,900バーツ(約6,500円)です。
まとめ
タイで子供を育てるのは簡単なことではありません。あらゆる申請手続きでハプニング続出です。日本レベルの手厚いサポートは期待できません。
ただ、努力を払う価値はあります。おかげで日本では得られない経験を通して子供たちは強くなっていきました。
新しい言語に慣れるまでは大変ですが、ある程度慣れてきたら友達関係で悩むことはほぼないでしょう。陰湿ないじめなどを心配する必要はありません。
インターナショナル・プログラムは学費が高く、英語はハイレベルです。でもイングリッシュ・プログラムでもかなりの英語力が身に付きますよ。
以上ご紹介した記事がタイに移住され現地の学校に通う方の参考になれば幸いです。