教える現場で垣間見得るタイの子どもたちによくある言動5つ

タイの子供









私はタイで12年間英語の先生をしています。生徒たちを見ていると、タイの文化や考え方、生活習慣が垣間見えます。日本ならそんなことはしない、日本人ならそういう風には考えないことなど、違いはたくさんあります。

最初のころはどう対処したらいいのか戸惑うこともたくさんありましたが、日本的な考え方や常識で物を見ることをやめたらずいぶん楽になりました。「こういうもんなんだ。」と臨機応変に対応している毎日です。今回は授業中によくあるタイ人の行動や言動を集めて書いてみました。

タイ人が1番最初に覚える英語のフレーズ

タイ人の学生

タイ人は義務教育として小学校1年生から英語の授業があります。英語の授業で1番最初に習ったフレーズを覚えていますか。私の記憶では確か「How are you?」「I’m fine, thank you.」だったと思います。

タイではアルファベットを覚えるよりも前に習うフレーズが2つあります。1つ目は「May I go to the bathroom/toilet?(トイレに行ってもいいですか)」、2つ目は「May I go to drink water?(水を飲みに行ってもいいですか)」です。

タイの学校には授業と授業の合間に休み時間がありません。そのためトイレに行きたい人や水を飲みたい人はいつでも自由に席を立つことができるのです。

授業中に抜けることが普通なので、お昼休み中でも授業が始まる前にトイレに行っておこうとか、水を飲んでおこうとか前持って準備をしません。

普段厳しい先生もトイレと水分補給に関しては寛容で、止める先生はいません。「Good morning!」の意味さえあやふやな小さな1年生も「May I go to the bathroom/toilet?」と聞いてくるのには驚きました。

トイレは集団

タイ人の学生

「May I go to the bathroom/toilet?」と1人の生徒に聞かれ、許可を出すと3~4人、ひどい時は7~8人ぞろぞろと立ち上がって集団でトイレに行こうとします。「1人ずつ行きなさい」と言うと誰も行こうとしないのです。

「なんで行かないの?」と聞くと、「お化けが怖い」と言うのです。高校生がそんなことを言うので、ただ授業をさぼる言い訳をしているのだと思っていました。

実際さぼりたいという気持ちもあるのは事実だと思いますが、タイでは特に女の子はトイレに1人で行ってはいけないと教わるそうです。1人でトイレに行くのは危ないことだと考えられているのです。

昔はトイレが外にあったり、夜は明かりがなくて暗かったりと危なかったと思いますが、現在ではそんなことはありません。昔の習慣がそのまま今まで続いているのでしょう。お化けが出るというのは全くの迷信だと思います。

タイ人に難しい英単語

鶏

全体的にタイ人にとって英語の発音は難しいようですが、タイ人の誰もが1度は言い間違えてしまう英単語があります。それは「chicken (チキン)」と「kitchen (キッチン)」です。どうしてかよくわかりませんが、この2つの単語を言い分けることが難しいのです。

「There is some chicken in the kitchen (キッチンにチキンがあります)」が「There is some kitchen in the chicken (チキンの中にキッチンがあります)」といつもごちゃごちゃになっています。

子どもから大人までみんな言い間違えるので、聞いていてとても可愛くてほのぼのした気持ちになります。

聞いてはいけない質問

タイ人

「家族」をトピックとした英語の授業をしていた時のことです。「What’s your mother’s name?(お母さんの名前は何ですか)」と私が聞くとみんなもじもじして答えようとしません。他のクラスで同じ質問をしてもやっぱり答えてくれませんでした。

後でわかったのですが、タイ人同士でお互いの両親の名前を呼んだり、名前のことでからかったりすることはとても屈辱的なことです。

だから他の人に自分の親の名前を知られたくなくて私の質問に答えなかったのです。タイ人にとって両親は最も大切な存在なので、その名前をふざけて呼ばれたりすることが耐え難いのです。

どうして医者になりたいか

タイ人

授業で「将来なりたいものはなんですか」と生徒たちに聞くと、7割ぐらいが「医者になりたい」と答えます。「どうして医者になりたいの?」と聞くと「医者はいい職業だから」「お金がもうかるから」「親が医者になれっていうから」と誰も具体的に答える人はいません。

タイでは子どもを医者にさせようとする親がとても多いです。子どもが物心つくかつかないころから、親が「あなたは医者になるのよ」と言い聞かせているので、子どもたちも「将来何になりたいの?」と聞かれると、自動的に「医者」と言う言葉が出てきてしまうようです。

そしてタイは親の言うことが絶対で子どもは親に逆らえないので、親の反対を押し切ってまでも「あれになりたい」「これになりたい」と自分の意思を押し通すこともないようです。

タイでは年配の方や両親を敬うことは当たり前の義務だと考えられています。日本でも目上の人を敬う習慣がありますが、タイでは年配の方や両親は絶対的存在で、彼らの意見に服従することが当然です。

そして子どもは大きくなったら親の面倒を見る義務があります。だからこそ親は子どもに地位や収入が安定している「医者」になってもらいたいのです。医者以外には軍人、エンジニア、薬剤師、国家公務員などが親が子どもに就いてもらいたい人気の職業です。

実際は医者になるために高い学力や学費も必要なので、なりたいからといってなれるものではありません。多くの学生が大学受験の段階で志望学部を変えざるを得ません。

親は必死で子どもが良い仕事に就けるよう援助します。大学院に進ませたり、海外の大学に留学させたり、資金を出して子どもにビジネスをさせてみたり、子どもが自立するまでしっかり親が面倒を見ます。その努力が親が年を取ったときに報われると考えられているのです。

まとめ

最初のころは授業中にやたら生徒が出たり入ったりすることにイライラしたり、質問しても答えがあやふやだったり、みんな「医者」って答えたりして「いったいなんなんだ!」とストレスを溜めていた時期もありました。

でも探っていくと文化背景が見えてきて面白いなと思うようになりました。自分の価値観が変わったわけではないですが、歩み寄ることができるようになりました。知らず知らずにタイ人の嫌がることをしたりしていることにも気づきました。

「タイ人のこんなところがおかしい!」と思うところはたくさんあるかもしれませんが、どうしてこんなことを言うのか、どうしてこんなことをするのか知ることがとても大切だと考えています。