タイの菜食週間(キンジェー)とは?いつもと違うタイ料理紹介

ゲート









毎年9月の終わり頃になると、タイでは黄色い旗に「齋」または「เจ」と書かれたものをちらほら見かけるようになります。これはタイ語で「キンジェー」と呼ばれるタイの菜食週間を表しています。

タイの菜食週間は旧暦の9月1日から9日間です。華僑や華人をはじめ、多くのタイ人がこの9日間を菜食で過ごします。この頃になるとレストランやコンビニでは限定メニューや限定商品を売り出し、いつもとは違うタイ料理が楽しめます。

ここではタイの菜食週間やその楽しみ方についてまとめてみました。

菜食週間とは

マーケット

中華圏からきた清めの数日

菜食週間(キンジェー)は中華系タイ人が信仰する道教のお祭りです。タイのいたるところで「キンジェー」の黄色い旗を見かけますが、タイ人がすべて菜食になるわけではありません。華僑や華人が主流です。

菜食週間の9日間は動物由来の食べ物を避けるだけでなく、刺激の強い味付けや匂いの強い野菜(ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ニラなど)も取ってはいけません。

また生活面においても飲酒、喫煙、性行為、うそ、盗みや殺生などの悪行は禁止です。菜食を守り、善行を心掛け、心穏やかに過ごすことで、心身ともに浄化されると考えられています。

グルメや健康的要素で根付く

もともとは、肉、魚、卵、牛乳といった動物由来の食品を避け、体を清めるという仏教の教えを実践することから広まったものですが、現在では宗教的な理由に加え、健康のため、またはグルメの1つとして9日間だけ菜食になる人もたくさんいます。

菜食はどこで食べられるのか

お店

メニューの変更や追加も

菜食週間(キンジェー)の間はあらゆるところに黄色い「キンジェー」の旗が立っているので、とても見つけやすいです。

9月の終わりごろになると、大衆食堂などでは全メニュー菜食に変わる店もちらほら見かけます。大手チェーンのレストランには一部菜食メニューも加わります。

タイで人気のアイスクリーム・ショップ「Swensen’s(スウェンセンズ)」でも、牛乳や卵を使っていないアイスクリームのポスターが店頭に大きく張り出されています。

ショッピング・モールの広場にも大々的に「キンジェー」ブースが広がっています。ベジタリアン・タイ料理、洋食、軽食、デザート、なんでもあります。その場で作って出してくれるお店もあるので出来立てが味わえます。

スーパーやコンビニでも

スーパーでは動物由来ではない食材すべてに、「キンジェー」のシールが貼られています。しょうゆや豆乳も「キンジェー」のものとそうでないものに分かれていて、それを見て初めて植物性だと思い込んでいたものにも動物性の添加物が入っていたのだと気づきました。

コンビニにも「キンジェー」商品がズラリと並んでいます。ベジタリアン弁当やお惣菜はもちろん、大豆ミートでできたソーセージやハム、ココナッツ・ミルクや豆類でできたデザートもこの時期は豊富です。

「キンジェー」のパン・コーナーにはカボチャや緑豆をあんにして包んだパンや、ミートパイの代わりのシイタケパイなどが売っています。カップラーメンなどのインスタント食品も「キンジェー」仕様になっています。

お寺で食事を無料で提供

食べ物

中華系の道教寺院へ

菜食週間(キンジェー)は中国由来のお祭りなので、タイ仏教のお寺ではなく、中華系の道教寺院で開催されます。菜食週間の9日間、寺院では無料で昼食と夕食を奉仕します。誰が行ってもかまいません。

食材調達、調理、片付けなどはすべてボランティアで行われています。お布施ができる箱が用意されていますので、そこにいくらかお金を入れることもできます。お金を入れなくても何も言われることはありません。

気をつけるべきマナー

私が毎年行く寺院では、白米と玄米、おかずが3品用意されています。ときどき豆乳や揚げパンなどが出るときもあります。ビュッフェ形式なので好きなものを好きなだけとってかまいませんが、あくまでも宗教行事の1つですので、あまりガツガツいかない方がいいでしょう。

食べ終わった後は、ボランティアでお皿洗いをしている人たちのところに食べ終わったお皿を持っていきます。お皿をそのままテーブルに置き忘れないようにしましょう。

寺院に食事に行く場合は、派手な格好、露出の多い服は避け、大きな声で話さないよう注意してください。

日本人の口に合うタイの菜食

食事

薄めの味付けで胃にやさしい

私はタイの菜食が大好きで、9日間だけといわず、毎日お店で売ってくれないかなと思っています。

タイの菜食は、野菜がたくさん取れて体にいいことに加え、刺激の強い味付けが禁止なので基本的に薄味なのです。薄味といっても、通常の味の濃いタイ料理と比べて薄いということで、日本人の舌にはちょうどいいと思います。

いつものタイ料理もおいしいのですが、とにかく油、砂糖、唐辛子、塩、ナンプラーを大量に使うので外食が続くと胃が疲れてしまいます。タイの菜食は油も控えめ、優しい味付けで辛さに悶絶することも、甘すぎて歯が痛くなることもありません。

置きかえ食材の妙味

またいつもは肉がメインのタイ料理を野菜や豆類に置きかえると、とてもおいしくなる料理もたくさんあります。グリーン・カレーは通常チキンを入れますが、代わりに厚揚げと大根で作ると絶品です。

カオマンガイもチキンの代わりにキノコ類でご飯を炊き上げ、唐揚げにしたキノコを添えて食べる「カオマンヘット」にしてみると意外なおいしさです。

タイ料理と菜食を比べてみるとおもしろいかもしれませんね。

菜食週間が終わると

食事

菜食週間の9日間が過ぎると跡形もなく「キンジェー」が消えます

食堂やレストランのメニューもあっという間に元通りになり、ショッピング・モールのホールに展開されていた「キンジェー」ブースはきれいに撤去され、ただの広場になっています。コンビニにずらりと並べられていた「キンジェー」商品も一気に片づけられています。

誰も口に出して言う人はいませんが、「肉が食べたかった!」という思いが伝わってくるかのように、ムーカタ鍋(タイ風焼き肉の鉄板鍋)やケンタッキー・フライド・チキンのお店がお客さんでいっぱいです。

コンビニでも「キンジェー」のポスターに変わり、「豚骨らーめん新発売」の大きなポスターが堂々と張り出されています。日本で12月25日を過ぎると、一気にクリスマス商品からお正月商品に変わる様子を彷彿させます。

まとめ

とてもおいしくて、体に優しいキンジェーを紹介してきましたが、実はもう一つの楽しみ方があります。それはお肉の代わりに使われている大豆ミートです。

大豆ミートはいろんな形があり、いろんな食材に化けます。ゼラチンを使って豚の角煮を再現したり、ミンチ状のものでハンバーグを作ったりできます。

またエビ入り焼きそばの大豆ミートのエビは見た目も本当にむき海老そのもの、歯触りもエビにそっくりです。他にも酢豚の豚の代わりに大豆ミートの唐揚げをいれたり、ソーセージにしたりと、言われなかったら気づかないものもたくさんあります。まるで大豆ミートのアートです。

タイの菜食週間(キンジェー)は食べるだけではなく、見た目も楽しいのです。10月にタイに来られる予定のある人はぜひ試してみてください。