ここ十数年でタイ人の英語力は飛躍的に伸びてきました。以前はタイを旅行していてもなかなか英語が通じなくてどこへ行くにも何をするにも大変でしたが、最近は英語でコミュニケーションできる場面が多くなってきました。
しかしタイ人の英語はとてもクセがあって聞き取りづらいのが難点です。私はタイで12年英語の教師をしていますが、発音やイントネーションには大変苦戦しています。生徒たちが英語で何か話しかけてくると、まったく何を言っているのかわからないことが頻繁にあります。
今回はタイ人英語のクセを知って、タイ人とのコミュニケーションに役立てていただけたらいいなと思い記事をまとめてみました。
語尾が落ちる
タイ語では単語の末子音は口の形だけ保ち、実際には発音しません。例えば「コー」は「コーク(コーラ)」、「センウイッ」は「サンドイッチ」、「ハウ」は「ハウス」です。
このように英語も末子音の語尾を落として発音します。「マッ」と言われるとそれが「マップ(map)」なのか「マット(mat)」なのか「マッド(mad)」なのかわからないのです。
あるとき生徒が私に「アイ・ライ・ユー」と言いました。「I lie you(あなたにうそをついてる)」と言われたと思い込み、「何をうそつかれたんだろう!?」と頭を急いで巡らしました。
でも相手はニコニコして「アイ・ラブ・マイ・ティーチャー」と言いました。なるほど、「アイ・ライク・ユー(I like you)」、「先生のことが好きです」と言いたかったようです。うそをつかれたわけではなくて、あーよかったと思ったエピソードでした。
語尾上がり
「アー」「イー」「オー」の発音で終わる単語は、すべて語尾が上がります。例えば「strawberry(ストロベリー)」を英語で発音すると「aw」のところにアクセントをつけて読みます。しかしタイ人の発音では最後の「y」を強く上げ調子で読みます。
他にも「Panama(パナマ)」「potato(ポテト)」「vanilla(バニラ)」「monkey(モンキー)」などすべて語尾を上げて言います。
タイでとても人気だった「Harry Potter(ハリー・ポッター)」も、「ハーリィー↑ポッター↑」と発音するとタイ人にはすぐ通じます。
ChとShの音の区別が難しい
タイ人はChとShの音の区別が難しいようです。一番よくみられるのは「wash(ウォッシュ)」と「watch(ウォッチ)」です。聞き取ることはできるのですが、発音すると「sh」の音を上手に発声できないようです。
というのは「シャ、シュ、ショ」にあたるタイ文字がないため、英語をタイ文字に置き換えると、「チ」に変わってしまうからです。例えば、「shampoo(シャンプー)」は「チャンプー」、「fashon show(ファッション・ショー)」は「ファッチョン・チョー」になってしまいます。
二重子音の2つ目の子音の省略
「Kl」「Kr」「Pl」「Pr」などの二重子音から始まる単語は、2つ目の「l」や「r」が落ちます。例えば、「princess(プリンセス)」は「ピンセス」、「truck(トラック)」は「タック」、「blue(ブルー)」は「ブー」です。
この子音の省略はタイ英語を聞き取る大きな妨げとなっています。
「A crazy man is trying to break a brown box.」は「ア・ケイシー・マン・イズ・タイン・トゥー・ベー・ア・バウン・ボッ」のように聞こえ、その文だけ聞いていると何のことを言っているのか、なかなかわかりません。前後の脈絡でなんとか判断します。
ちなみにタイ語には「z」の音がないため、「crazy」は「ケイシー」になります。
拗音がない
拗音(ようおん)とはいわゆる小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」のことです。タイ語には拗音がありません。例えば、「chewing gum(チューインガム)」は「チウインガム」、「Tokyo(トウキョウ)」は「トウキアオ」、「Japan(ジャパン)」は「ジアパン」になります。
日本語の「ギョウザ」や「シューマイ」「しょうゆ」も、「ギオザ」「シオマイ」「シウユ」になります。
ハーフの子どもたちの英語
息子の学校にはハーフの子どもたちがたくさんいます。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、中国、日本、インドなどいろんな国の子どもたちがいて、タイ語以外の母国語を話します。でも共通言語は英語かタイ語です。
金髪で目が青い、一目で西洋人だとわかる子どもたちが、タイ語なまりの英語を話している光景がとてもおもしろいです。
彼らはネイティブ英語もきちんと理解して話すこともできますが、お友達と話すときはわざとタイ語なまりで話すのです。その方が友達付き合いしやすいのでしょう。生き抜く術を既に身につけているようで感心します。
彼らにとってはネイティブ英語とタイ英語は2つの言語のようなものであり、用途によってしっかり使い分けているのです。
まとめ
以前中学のクラスで「インターネットがあると何ができますか?」という質問に生徒が「サー、ダーター」と答えました。思わず聞き返しましたが、やっぱり「サー、ダーター」です。何度も聞き返すのも気が引けてありとあらゆる創造力を働かせました。
「タイ語、いや、日本語かもしれない。うー、わからない!」。考えていると、周りの生徒たちも「サー、ダーター」と助け船を出すように言い始めました。
まったくわからなかったのでとうとう「サー、ダーダーってどういう綴り?」と聞いてしまいました。すると「Search Data」とわかりました。
このようにちょっとした英語が聞き取れずに右往左往してしまいますが、慣れると雰囲気でわかるようになってきます。タイ人はとてもフレンドリーでおしゃべりが大好きなので、あまり聞き取れなくてもノリやジェスチャーも交えて会話を楽しんでください。