タイ人は英語に強い?タイの英語教育の状況

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私が初めてタイに行ったのは2002年のことです。ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイと5か国周りました。その中でタイが1番近代的でしたが、1番英語が通じませんでした。

それから16年たった2018年現在タイ人の英語力は随分変わりました。街中で英語を聞くことも増え、英語が通じることも多くなりました。日本からはタイに英語留学をしに来る人までいます。

そんなタイの英語教育に関して、現役英語教師である筆者がその実情や問題を書いてみたいと思います。

タイ人の英語力とは

英語

2002年以降タイには毎年行っていましたが、行くたびに英語が通じるようになってきました。まだまだ公用語として弱いですが、街中やお店で英語で尋ねても、たいてい誰か近くに英語ができる人がいるので、英語でコミュニケーションがとれるようになりました

実際タイ人の英語力はどれくらいなのでしょうか。私が知る限りでは、インターナショナルスクールを出た人を除いて、英語でコミュニケーションがとれるというレベルだと思います。一般的な日本人の英語力と同じくらいです。

でも外国人がたくさん住んでいるので、自然と英語を話す状況が生まれて、日本人よりは英語を話すことに抵抗はないのかもしれません。

英語教育に力を入れている

教室

学校での英語教育

日本と同様にタイでも英語を学ぶことにとても力を入れています。特に子どもに英語を学ばせたい親が多いです。

タイは日本よりもインターナショナルスクールがたくさんあり、バンコクだけでも100校以上あります。その他にもタイ語と英語の2か国語で教えるバイリンガルスクールや、イングリッシュプログラムという特別コースを設けた公立の学校もあります。

そういう学校を卒業した人たちがどんどん世に出ていって英語を話せる人たちが増えました。また同時に英語圏の大学に進学する人や語学留学をする人もとても増えています

英語教育の受け方

将来英語圏の大学に進学させたいと思っている親は、子どもをインターナショナルスクールやバイリンガルスクールに入れます。でもこれらの学校はタイの教育カリキュラムとは全く違う教育法なので、将来タイの学校に進学することが難しくなります

タイの学校に進学する予定の子どもは、一般の公立校のイングリッシュプログラムに入り、タイの教育カリキュラムに沿って、教科の半分くらいを英語で学びます。

または英語を主体に勉強しないで理数系に力を入れたいお子さんたちは、学校が終わった後や土日に塾で英語を勉強します。英語塾をはしごしている子どもたちもいます。

朝タイ人の先生から英語を習い、昼からは英会話スクールでネイティブスピーカーから習うという話はよく聞きます。みんな英語に一生懸命です。

英語教育を受ける時間

タイでは幼稚園から英語の授業があります。幼稚園からイングリッシュプログラムが設けられているところもあるし、ごく普通のローカルの幼稚園でも簡単な会話やアルファベットを書いたりしています。

それから大学に入るまで英語の勉強をするのですから、15年以上も英語に費やすことになります。

私が勤める語学学校にも2歳くらいの子が英語を習いに来ます。子どもの英語教育にかける親の必死さは日本と同じようです。

イングリッシュプログラムの問題

英語

学力が低くなる

一般校のイングリッシュプログラムは、タイの教育カリキュラムで英語も勉強できると書きましたが、実際はマイナス面も多いのが実情です。

イングリッシュプログラムでは基本的に数学、社会、理科、英語の教科を英語で学びます。ここで問題なのは生徒たちの英語力です。

幼稚園から英語を勉強したとはいえ授業を理解するだけの英語力はありません。ただでさえだんだん授業内容が難しくなっていくのに、それを通じない英語で説明されれば益々わからなくなってしまいます。そのため普通科の生徒たちと比べ学力が低くなってしまうのです。

プログラムが小中高で一貫していない

イングリッシュプログラムは小中高で共有されず、一貫していません。小学校だけイングリッシュプログラムに入って中学からは普通科に入る子どもたちがいます。先ほども述べたように、学力に差がついて進学が難しくなるため普通科に切り替える子どもたちが多いのです。

また、タイは公立の中学高校が一貫しているところが多いのですが、なぜか中学にはイングリッシュプログラムがあって高校にはないところがほとんどです。イングリッシュプログラムを続けたくても続けることができません。

だからといってインターナショナルスクールに編入するには金銭的にも英語力的にも大変です。そのため、せっっかく上手になってきたところでやめてしまいます。こういった背景があるため、英語に力を入れている割にはコミュニケーションレベルで止まってしまうのです。

日本人とタイ人の英語

黒板

英語は学業の1つ

英語に関して言えば、タイ人と日本人はそっくりです。タイも日本も過去に外国の植民地になったことがないため、外国語が公用語として使われたことがありません。つまり普段の生活の中で外国語が使われる習慣がありません。

そのため英語を言語というよりも、学業の1つとして扱われがちです。

英語の授業風景

私が学校に英語を教えに行くと、「How are you? 」「I’m fine thank you. and you?」と懐かしい挨拶が始まります。私が中学高校で言い続けた言葉と全く同じです。

「How are you?」と聞かれれば、無意識に「I’m fine thank you. and you?」が出てきてしまう日本人はたくさんいるのじゃないでしょうか。会話ではなく決まり文句を言うに過ぎません

授業も完全な受け身で、自分から英語を話そうとする生徒はあまりいません。ロールプレイやプレゼンテーションはとても嫌がります。

英語は教科の1つで、習った英語を使って話してみようという姿勢はあまり見られません。日本でも「受験英語」という言葉があるのでとても良く似ていますね。

実際に話すときは

授業以外で英語を話すことはほとんどなく、外で外国人に話しかけられてもまごまごしています。とても日本人と似ていますが、違うところはタイ人は外国人に対してもっとフレンドリーで気さくな感じがします。

外国人に話しかけられてまごまごはするけれど、「わかりません。」と言って立ち去る人はいないです。周りの英語のできる人を引っ張て来て、あれやこれやと話しています。

通じてるかどうかは別として、なんとかコミュニケーションを図ろうとしている努力は見えます。英語力というよりはお国柄ですね。

タイに英語留学はアリかナシか

文字

個人的におすすめかどうか

はっきり言ってタイに英語留学は全くおすすめしません。確かにここ10数年でタイの英語力はとても伸びました。それは日本も同じです。

最近日本でも英語が通じる人が多くなってきましたよね。英語の表記をよく見かけたり、英語のアナウンスもよく耳にしたりします。観光地に行けば通訳ボランティアの方がいたりします。

だからと言って、日本にわざわざ英語を学びに行きたい人がいるかというと、答えはNOだと思います。英語が通じるようにはなってはきたものの、あくまでも日本語が主流です。タイも同じで、主流はタイ語です。

タイで英語を勉強するメリット

タイで英語を勉強するメリットは日本より安く勉強できることです。英語留学を目的でタイに来ることはおすすめしませんが、違う目的でタイに来て空いた時間に英語を習うのはアリだと思います。

例えば、タイ語やタイマッサージを習いに来たとか、休暇でタイに長期滞在しながら、英会話教室に通うのはおすすめです。現地にいる外国人や英語のできるタイ人と話すことは英語の実戦練習になりますし、人脈も広がります。

ただ英語をメインにタイへ来て勉強しても、結局日本と同じで英語を使う環境にないため、英語がさほど伸びるとは言えない点に注意してください。

まとめ

タイ人にとってインターナショナルスクールやバイリンガルスクールは授業料がとても高いので経済的に余裕のある家庭の子どもたちしか行くことはできません。

経済的に余裕のない子どもたちはローカルの普通の学校で英語を学びます。英語ができない英語の先生が教えることがほとんどで質の高いものはありません。だから近年タイ人の英語力が伸びたというのは中流以上の家庭に限定されます。

また、いい学校に行けなくても自力で英語を身に着けようとしている子どもたちもたくさんいます。彼らにとって英語を話すことはいい仕事に就けることであり、貧困を抜け出す道でもあるのです。

経済的な違いはあっても、タイ人にとって英語を話せるようになることが将来の道を開くことだという考えは同じです。タイ人の英語教育は今後ますます過熱していくでしょう。