みなさんは、ニュージーランドの治安にはどういったイメージがありますか?2018年度の世界平和度指数ランキングで第2位に輝いたニュージーランドは、もしや日本よりも治安が良いのではないか、と思う方もいるかもしれません。
しかし、ここで注意していただきたいのが「平和度指数 = 治安の良さ」ではないことです。平和度指数は、政治や軍事など様々な基準をもとにしているので、「平和」だからといって「治安が良い」とは限らないのです。
それでは、ニュージーランドの治安事情について見ていきましょう。
ニュージーランドの治安情報
ニュージーランドの治安とは
結論から言うと、ニュージーランドの治安は日本より悪いです。犯罪の発生率は日本と比べて高く、窃盗や傷害事件が多く発生しています。2018年度の総被害数は259,891件を記録しており、そのうち77%が所有物(家や荷物など)に対して、残りの23%が人に対する被害です。
所有物に対する犯罪としては置き引きや車上荒らし、空き巣が多発していて、日本人で被害に遭った方も少なくありません。
私の弟も、ニュージーランドのフードコートで置き引きに遭い、リュックを盗まれたことがあります。幸い、当時5歳だった弟のカバンに貴重品など入っているはずもなく、小さな被害で済みました。
人に対する犯罪としては、飲酒に絡む暴行・傷害事件、さらに性犯罪が多く発生しています。また、近年ニュージーランドでは薬物乱用が社会問題となっています。平和なイメージがあるニュージーランドでも油断せず、高い防犯意識で過ごすことが大切です。
ニュージーランドに子どもを連れて行っても大丈夫?
ニュージーランドに子どもを連れて行くことは、世界的に見れば比較的安全です。この国での子どもの誘拐・拉致事件数は年間80件ほどに抑えられていて、これは先進国の中でもかなり少ない方です。
ただし、日本と同レベルの防犯意識では絶対にいけません。ニュージーランドに住んでいる私から見ると、この国の住民と日本とでは、子どもの安全に対する意識に大きな差があります。つまり、一人ひとりの子どもを守ろうとする意識や対策が、犯罪を抑えているわけです。
では、ニュージーランドに子どもを連れて行くときには何を注意すれば良いのか、見ていきましょう。
子どもは絶対に1人にしない。
まず、この国では法律により「特別な管理下に置かれていない限り、14歳未満の子どもから離れてはいけない」とされています。つまり、大人の家族やベビーシッター、保育園などの特別な管理下に子どもを預けない限り、たとえ家や車の中でも子どもを置いて行くことはできないのです。
小学生が子ども達だけで登下校をするような日本とは、比べ物にならないくらい厳しいですね。
女の子だけでなく、男の子も油断禁物です。2016年11月にオークランド西部ラヌイ地区で起きた拉致事件では、11歳の男の子が被害に遭いました。学校から家に歩いている途中、男に車で連れ去られ、4時間の性的暴行を加えられました。なんとも痛ましい事件です。
とにかく、子どもからは「離れない」「目を離さない」を心がけましょう。
子どもにも自衛の術を身につけさせよう。
実は、0~19歳の中で最も誘拐・拉致被害に遭っているのは、15~19歳の層です。つまり、親の看視を離れて1人で行動するようになる年頃が、一番狙われやすいのです。そこで、子ども自身にもしっかりと防犯意識を持たせることが大切です。
ニュージーランド警察が推奨している対策として、子どもとの間に合言葉を設けるというのがあります。具体的には、合言葉を決めてから子どもにこう教えます。誰かに誘われたら十分な距離をとって「合言葉はなんですか?」と尋ねるように、と。
ちなみに、合言葉のことは「Code word(コード・ワード)」と呼ばれています。コード・ワードのおかげで誘拐を免れた子どももいて、かなり効果的です。この方法以外にも、護身術を身につけさせたり、どういう場所が安全・危険なのか教えるとさらに安心です。
ニュージーランドで日本人が被害に遭っている事件
置き引き、車上荒らし、ひったくり
ニュージーランドには19,664人の日本人が在留しています(2017年10月1日現在)。この国で日本人が遭う被害としては、「所持品が盗まれる」がダントツです。置き引き、車上荒らし、ひったくりの被害が多く、パスポートなどの貴重品を盗まれる事件も起きています。
ニュージーランドでは、中国や日本人などのアジア人はお金持ちというイメージがあります。その中でも日本人は「現金を多く持っている」と思われているので、ターゲットにされやすくなります。
さらに悲しいことに、暴行事件や性犯罪に巻き込まれてしまった日本人もいます。これらの事件は夜、またはヒッチハイクをしたときなど、リスクを伴う状況で起きています。日没後に出歩くのは極力避け、たとえ車に乗っていても用心が必要です。
ニュージーランドで注意すべきこと・注意すべき場所
ここまで読んでくださった方なら、もう「ニュージーランドは平和だ」という幻想は消えてなくなったでしょう。では具体的に何が、どこが危険なのか、そしてその危険を避ける方法をご紹介します。
夜の散歩は絶対にNG
ニュージーランドは全体的に朝型の社会です。日没後は一気に人気がなくなり、夜に出歩いている人はほとんどいません。そして、暴行・傷害事件の多くは夜に発生しています。
夜に出歩くのを避けるには、日没の時刻を知らなければなりません。南の地域ほど、季節によって日没の時刻に大きな差があります。私の住むクライストチャーチという街の日没は、夏(12~2月)は9時半頃、冬(6~8月)は5時頃と、季節によって大きな差があります。
ご自分が訪れる場所の日没時間をあらかじめ調べておき、リスクを避けることが必要です。
もし日が暮れてしまったら、タクシーなどを呼びましょう。お金はかかりますが、それで悲惨な事件に巻き込まれずに済むのなら、利用する価値は大いにあります。タクシーを待っている間も、周りに怪しい人がいないか十分に注意しましょう。
盗人から荷物を守るコツ
さて、日本人の多くが被害にあっている窃盗についてです。まずは普段のご自分の行動を振り返りましょう。
- 1. レストランや映画館で、荷物を足元に置いたりカバンを背にかけていないか。
- 2. 席取りのために荷物を置き去りにしていないか。
- 3. 外を歩くときに、イヤフォンやヘッドフォンをしていないか。
- 4. 歩道を歩くとき、車道側に荷物を持っていないか。
- 5. 人気がない場所に車を停めていないか。また、短時間だからと車の鍵をかけないことがあるか。
- 6. 車を離れるとき、車の外から見える位置に荷物を置いていないか。
1・2は置き引きのリスクを高めます。映画館の椅子の下に置いておいた荷物が盗まれたという日本人もいます。荷物は肌身離さず持っているのが安全です。
次は3・4についてです。ひったくりのように、強引に荷物を取られてしまう事件もあります。イヤフォンなどはせず、常に危険を察知するアンテナをたてましょう。
5・6は車上荒らしに遭うリスクを高めます。たとえ鍵をかけていても、車の窓を割って中の荷物やパスポートを取られた日本人が多くいます。警報ベルや防犯フィルム、ドライブレコーダーなどの防犯グッズを備えることをおすすめします。
危険な場所、貧困街や薬物問題を抱える地域
このWebサイト(https://insights.nzherald.co.nz/)をご覧ください。ニュージーランド国内で起こった犯罪件数が、地域ごとに表示されるマップです。マップの濃淡が治安の良し悪しの目安になり、とても便利ですね。
オークランド市では、中心部(Auckland Central)が特に犯罪が多くなっています。この辺りは繁華街で、夜は暴行事件や犯罪組織メンバー同士の抗争にも注意が必要です。
オークランド北西部には貧困地域が広がっており、「グレン・インズ(Glen Innes)」や「マウント・ウェリントン(Mount Wellington)」は地元でも危険な地域と言われています。
これらの地域は違法薬物が問題となっている地域で、道端に注射器が転がっていることがあります。
これは私の弟の同居人が体験したことですが、夜の11時頃にグレン・インズを歩いていたら、男に拳銃を突きつけられ恐喝に遭いました。この地域に夜、出歩くことは絶対に避けましょう。
ニュージーランドで危険な目に遭ったらどうする?
危険な目に遭わないことが一番ですが、もし遭ってしまったら、とにかく落ち着いて対処をしましょう。まず、この国の緊急ダイヤルは「111」です。電話が通じたら、警察(Police)、救急車(Ambulance)、消防(Fire)のいずれかを伝えます。
盗難に遭ったとき
置き引きやひったくり、車上荒らしに遭ったときは、111の警察に通報します。クレジットカードが盗まれてしまったときは、すぐにカード会社に連絡をして使用停止にします。その後警察へ行き、盗難証明書(Police Report)を発行してもらいましょう。
この証明書は、海外旅行保険の保険金を請求するときや、パスポートを盗られてしまった場合に必要です。パスポートを盗られたときは、証明書を取得した後、ニュージーランドにある日本の大使館か領事館に連絡をします。
パスポートの再発給には2週間ほどかかりますが、帰国までに間に合わない場合は「帰国のための渡航書」を発行してもらいます。パスポートや渡航書の申請に、盗難証明書が必要になります。
大使館・領事館の連絡先は、この章の最後にまとめたのでご覧ください。
空き巣に遭った場合
空き巣に遭ったと気づいたら、速やかに家の外に出ましょう。まだ犯人が家の中にいるかもしれないので、家の外で111にかけましょう。しかし、すでに犯人はいないと確信が持てる場合は、緊急ダイヤルではなく近くの警察署に連絡しましょう。
ニュージーランド警察のこちら(http://www.police.govt.nz/)のページから、マップ上で警察署を探せます。
警察が家に来るまでは、犯人の指紋を残すために、荒らされた場所は極力触らないようにしましょう。しかし、警察が家に来てくれるまで1日以上かかることがあります。
ニュージーランドは2016年上半期に、空き巣・強盗の事件解決率わずか8.2%という記録を残しています。盗まれたものが戻って来るという期待は、あまりしないほうが良いみたいです。
トラブル時に役立つ、主な連絡先
大使館や領事館の連絡先や住所をまとめました。
この他にも、在オークランド日本国総領事館のWebサイト(https://www.auckland.nz.emb-japan.go.jp/)に、外務省や日本関連の機関などの連絡先が載っています。
もしトラブルに巻き込まれても、日本語で相談に乗ってくれる機関があることを覚えておけば、冷静に対処できそうですね。しかし、公的機関だけでなく、家族や友人などとも緊急時の連絡方法を考えておくことが大切です。
在ニュージーランド日本国大使館
- 住所:Level 18, The Majestic Centre, 100 Willis Street, Wellington 6011(PO Box6340) … PO Boxは私書箱のことです
- アクセス:ウェリントン駅からバス12分
- 開館時間:月~金、一般(9am-12:30pm、 1:30pm-5pm)、領事受付窓口(9am-12pm、1:30pm-4pm)、ビザ電話受付(9am-12pm)その他の領事電話受付(9am-12pm、1:30pm-5pm)
- 電話番号:(04) 473 1540
- Fax:(04) 471 2951
- Eメール:enquiry@wl.mofa.go.jp
- 公式サイト:https://www.nz.emb-japan.go.jp/
在オークランド日本国総領事館
- 住所:Level 15, AIG Building, 41 Shorthand Street, Auckland (PO Box3959) … PO Boxは私書箱のことです
- アクセス:ブリトマート駅から徒歩7分
- 開館時間:月~金、窓口(9am-12pm、1pm-3:30pm)、電話受付(9am-12pm、1pm-5pm)
- 電話番号:(09) 303 4106
- Fax:(09) 377 7784
- Eメール:問い合わせる内容によってアドレスが変わります。(https://www.auckland.nz.emb-japan.go.jp/)
- 公式サイト:https://www.auckland.nz.emb-japan.go.jp/
- グーグルマップ:https://goo.gl/maps/DG73wYmJE1R2
在クライストチャーチ領事事務所
- 住所:12 Peterborough Street, Christchurch
- アクセス:バス・インターチェンジからバスと徒歩で10分
- 開館時間:月~金、一般(9am-12:30pm、1:30pm-5pm)、領事事務関係窓口時間(9:15am-12:15pm、1:30pm-4pm)
- 電話番号:(03) 366 5680
- Fax:(03) 365 3173
- Eメール:enquiry.chc@wl.mofa.go.jp
- 公式サイト:https://www.nz.emb-japan.go.jp/
ニュージーランドはテロの可能性はあるの?
ニュージーランド国軍は反ISIL連合に参加しているため、国際テロリズムの危険性は低くありません。
ニュージーランド政府は2014年に、国内のテロ脅威度を「とても低い」から「低い」に引き上げており、国民の警戒意識を高めようとしています。
ニュージーランドに3ヶ月以上滞在する方は、最寄りの大使館・領事館に「在留届」を登録しましょう。そうすると、災害やテロ発生時にメールで案内情報を受け取れます。3ヶ月未満の滞在や旅行をする方も、「たびレジ」に登録することをオススメします。
「たびレジ」と「オンライン在留届」は、いずれも外務省によるサービス(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/)で、このWebページから行えます。
まとめ
今回はニュージーランドのリアルな治安事情を綴ってきました。平和なイメージとは裏腹に、意外に危険な側面もあるとわかっていただけたでしょうか。
しかし、みなさんどうか「ニュージーランドに行くのをやめよう」なんて思わないでください。世界的に見れば、この国はやはり安全な方なのです。大事なのは、危険を避けるためにどれだけ注意ができるかです。
みなさんのニュージーランドでの旅行・滞在が安全なものになるように願っています。最後までご覧いただき、ありがとうございます。