パリのショーウィンドウに並ぶ洗練されたお菓子で印象的なフランス菓子ですが、その他にも異なる風土を生かした地方菓子がたくさんあります。
海沿いの塩を含んだ風が吹くブルターニュで作られる有塩バターを使ったお菓子や、シャンパンに合うように作られたお菓子、ボルドーワインを製造する際の「あまりもの」から作られたお菓子など、フランスの地域と歴史に密接した魅力的なお菓子がたくさんあります。
今回はそんなフランスの地方菓子を紹介したいと思います。
クラフティ
クラフティが生まれたのはフランスの中南部、リムーザン地方。卵に砂糖、牛乳、小麦粉を合わせて中にさくらんぼをいれて焼き上げたお菓子です。
シンプルなお菓子なので、中のフルーツを変えただけの違う名称のお菓子がフランス中にあります。アプリコットやモモ、リンゴなどをいれて焼き上げた場合はフロニャルド、プルーンや干しぶどうなどのドライフルーツが中にはいるとファーブルトンという名前のお菓子になります。
混ぜて焼くだけの簡単なお菓子なので私も時々作りますが、牛乳と卵のとても優しい味わいです。日持ちもしないですし、家庭で作ってまだ温かさが残るうちに食べるのが美味しいお菓子です。
ガレット・ブルトンヌ
パリの西、大西洋に面したブルターニュ地方のお菓子です。普通のクッキーよりも厚みがあり、有塩バター、もしくは生地に塩を多めに加えて作られるため、甘じょっぱい味であることが特徴です。
そのままおやつとして食べたり、タルト生地のようにケーキの土台に使われることもあります。ブルターニュ地方だけでなくどこのスーパーでも売られていて、手軽に手に入れることができるのでお土産にも最適です。
ガトーバスク
その名の通り、スペイン国境近くのバスク地方のお菓子です。タルト生地を少し柔らかくしたようなサクサクした生地の中にカスタードクリームやチェリージャムがはいっています。
バスク地方はピレネー山脈を挟んで大西洋側、フランスとスペインの両方にまたがっています。ここに住む人はバスク人と呼ばれ使う言語もバスク語と、フランスとスペインの雰囲気とはまた違う独特の文化を持っている地域です。
最近では美食やアートの都として人気の旅行先にもなっています。
ビスキュイ・ローズ・ド・ランス
クセのない味わいのビスキュイ
パリの北東シャンパーニュ地方に伝わるお菓子です。ランスはシャンパンを産するシャンパーニュ地方の中心都市。
このお菓子はピンク色の柔らかいビスケットで、シャンパンを試飲する際一緒に食べられます。華やかな外観なので期待して食べると、意外にもパサっとしたあっさりした口当たり。
実はこれだけ食べてしみじみと美味しい〜と食べる感じのお菓子ではありません。あくまでシャンパンと一緒に食べたり、クセがなく水分を吸いやすい特徴を生かしてムースに添えられていたりする、わき役のお菓子なのです。
シャンパンと一緒にお土産に!
フランスでは1960年から存在していたといわれ、現在ではフォシエ社が特許を取得して生産しています。
パリをはじめ大きめのスーパーで販売されているので、シャンパンと一緒にぜひビスキュイ・ローズをお土産に買ってみて下さい。
マカロン
マカロンの原型となったメレンゲと粉末アーモンドを使った焼き菓子は、フランスやイタリアで数多く目にすることができます。地域ごとに少しづつ配合や手順が異なり、その地域独特の味を生み出しています。
マカロン・パリジャン以外はその地方へ行かないとなかなか手に入らないので、旅行などで訪れた際はぜひ食べてみて下さい。
パリ
マカロン・パリジャンとも呼ばれる、色とりどりで表面がなめらか・中がしっとりしているマカロンです。中にジャムやバタークリーム、ガナッシュがはさまれていることが多いです。
サンテミリオン
渦巻き状に絞られた生地が特徴のマカロンです。表面は砂糖のカリカリとした食感で、中はしっとりしています。
サンテミリオンの街はボルドー近郊にあり、有名なワイン生産地です。世界遺産にも指定されている石畳が美しい街は観光にもおすすめです。
バスク
マカロンは表面に色がつかないように低温のオーブンで焼かれることが多いのですが、バスク地方のマカロンは表面がよく焼けていることが特徴です。そのためクッキーのような少し固い歯ざわりで、アーモンドの風味が豊かな香ばしい味わいです。
カヌレ
正式名をカヌレ・ド・ボルドーという、フランス南西ボルドー地方のお菓子です。外側は黒い焼き色がついて香ばしく、中はプリンのように柔らかい、特徴的な食感です。
カヌレのお菓子の歴史はボルドーワイン造りがきっかけになっています。ワイン製造の過程で、澱(おり)を取り除く作業で卵白ばかり使われたため卵黄がいつも余っていました。そこで考え出されたのが卵黄を使ったお菓子、カヌレだと言われています。
タルトタタン
このお菓子はフランス北中部ソローニュ地方にあるホテルの一つ、「タタン」から生まれたと言われています。このホテルを経営するタタン姉妹が、ある日アップルパイの調理中に誤ってりんごを焦がしてしまいました。
その失敗を取り返そうとりんごの上にタルト生地をのせ、そのままオーブンで焼いたものを客に出したところこれが大好評。それ以来この姉妹の名前をとってタルト・タタンと呼ばれているそうです。
ピティヴィエ
パリの南西にあるピティヴィエという街で生まれたお菓子です。パイ生地にアーモンドクリームが詰められ表面に模様が描かれた、シンプルながら飽きのこない味わいです。
ピティヴィエという名前はあまり聞かないかも知れませんが、同じようなレシピで作られる「ガレット・デ・ロワ」というお菓子があります。
ガレット・デ・ロワはアーモンドクリームの中にフェーブという陶器でできた小さい人形が入れられています。こちらは1月6日の公現祭をお祝いして食べるお菓子として、フランス全土で食べられます。
まとめ
フランスの地方菓子をいくつか紹介いたしました。異なるお菓子の背景にある地域の特性や歴史などを知れば、お菓子を食べることがもっと楽しくなります。
ご紹介したお菓子の中には日本やパリなどの都市部で手に入る地方菓子もありますが、その土地に行かなければ食べることができないお菓子もあります。
もしフランス地方を旅行されることがあれば、ワインや地方ならではの「食」と合わせて地方のお菓子に目を向けてみると一層興味深い旅になるのではないでしょうか。