あこがれのアパルトマン!フランス・パリでの住居探し方・選び方

タワー









フランスで住居というと、みなさんはすぐにアパルトマンを思い浮かべるのではないでしょうか。屋根裏部屋でなくても、映画やテレビで見るあこがれのフランス生活と言えば、やはりアパルトマン。いったい中はどんなふうになっているのでしょう?そして、そこでの生活は?

今回は、私がパリで暮らしていたときの部屋を例に挙げながら、フランスのアパルトマンでの暮らしや選び方についてご紹介しようと思います。

※1ユーロ=約122円(2019年6月)

アパルトマンとは?

アパルトマン

ひょっとするとみなさんの中には、アパルトマンって何?と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

アパルトマンとはフランス語で「appartement」と書き、主に土地に限りのある都市部に見られる集合住宅の一区画です。日本語の「アパート」より「マンション」に近いと思ってもらえればOKです。

パリでよく見かける美しい集合住宅オスマン様式に代表される、複数階からなる建物の中の住居部分をアパルトマンと呼びます。

ちなみに、このアパルトマンが入っている建物自体は「immeuble(イムーブル)」と呼ばれます。1階部分が店舗やオフィスになっていて、2階以降がアパルトマンとなっていることが多いのも、このタイプの建物の特徴です。

セキュリティー対策

セキュリティ

暗証番号がないと入れない仕組み

フランスのイムーブルにはセキュリティー対策として、ほとんどの場合入り口に「デジコード」と呼ばれる暗証番号を入力する小さなパネルがあります。番号を押すとカチッと音がして、入り口の扉が解錠されます。

この暗証番号がないとインターフォンにたどり着けないので、フランスで住所を教えてもらうときは、必ずデジコードの暗証番号も教えてもらうようにしましょう。

もし、忘れて電話をかけて教えてもらう場合などは、くれぐれも道行く人に聞かれないように気を付けましょう。

入室までの審査管理が複数あると安心

また、数は少ないですが、学生寮など建物によっては入り口をギャルデイアンと呼ばれる建物の管理人に開けてもらう場合もあります。

建物によっては、そこからさらに別のドアを開けて、ようやく目的のアパルトマンのある廊下や中庭の奥の別の建物などにアクセスできる場合もあります。

フランスでアパルトマンを借りるときは、部屋に入るまでにデジコードや鍵のついた扉が複数あるかどうかも確認しておいたほうがいいかもしれません。

私のアパルトマン

アパルトマン

私のアパルトマン

私がパリで暮らしていたのはとても小さなアパルトマンでした。ワンルームで、広さは約18平方メートル。入り口がリビング部分、左手にバスルーム、右手はカウンターで仕切られたキッチンでした。

家賃は家具付きでガス・水道・電気すべて込みで、月およそ800ユーロ。立地については以下に書きますが、パリでこの立地でこの値段は、2009年当時でもかなり安いほうです。

建物の前の道は大通りでしたが、私のアパルトマンは中庭に面していたため、騒音に悩まされることはありませんでした。

セキュリティー

道に面した大きな扉をデジコードで開け、郵便受けの並ぶ廊下を通り抜け、私のアパルトマンの入る建物へアクセスするための鍵を開け(ここにインターフォンがついている)、自分の部屋の鍵を開けるという3段階の扉がありました

立地

立地は抜群。パリの中心部6区の治安のよい地域にあり、しかも最寄り駅まで徒歩1分。ターミナルのモンパルナス駅までも徒歩10分。SNCF(フランス国鉄)だけでなく、メトロも4路線利用できる非常に便利な場所でした。

また、食料品や衣料品の買い物は、歩いて10分のモンパルナス界隈に行かなくても、最寄り駅から始まる通りは商店街。遠くに行かずともすべてそろう理想的な環境でした。

よくあるトラブル

木の壁

騒音

見た目は美しいけれど、古い建物は音が筒抜け。板張りの床を歩く上の住人の足音や、下の住人の音楽がうるさくて眠れないなどは日常茶飯事。そういうときは、まず怒らないでこちらの不満を具体的に伝えます。くれぐれも感情的にならないように気を付けましょう。

それでも変わらないときや、自分の手に負えないときは、警察を呼びましょう。

私も1回だけですが、夜中の騒音で警察を呼びました。そのときは共有部分が汚されたり壊されたりと、ちょっと目に余る状況だったためです。

夜にハイヒールなどの靴で室内を歩くことは避けたほうがいいことは、言うまでもありませんね。また、夜間にトイレの水を流すと、階下からうるさいと苦情が来ることもあります。

日本の常識とは違うのだと心得て、被害者にも加害者にもならないよう心がけたいものです。

お湯

お湯の問題はよくありがちです。オール電化になっていることの多いフランスでは、湯沸かし器はタンク式が多いため一定の量のお湯しか使えません。

次のお湯が沸くのに、タンクのお湯がなくなってから1時間以上の間、待たないといけないことはよくあります。洗い物の後にシャワーを浴びるのは控えておいたほうがいいでしょう。

浴槽があるアパルトマンは少ないですが、あってもお湯が浴槽にたまる前になくなってしまう可能性もあるので注意が必要です。

また、水道代も家賃に含まれている場合は、お風呂にお湯をためて使わないように言われることもあります。契約書に明記されなくても、大家さんとトラブルにならないようにあらかじめ確認しましょう。

排水

前述の通り、お湯は大量に使えないようになっています。そのためだけとは思えませんが、古い建物が多いアパルトマンでは、下水設備が結構お粗末だったりします。また、水に石灰分を大量に含む硬水のせいで、下水管が詰まりやすくなっています。

洗浄剤を使うという手もあるのですが、ある友人は排水口に入れる洗浄剤で管に穴をあけてしまい、汚水があふれ出て大変なことになりました。

私の場合は、タイルの目地が古くてそこの割れ目からシャワーの排水が漏れました。非常にあわてましたが、すぐに大家さんに頼んでコーキングを塗ってもらい、ことなきを得ました。

回避に保険加入は必須

もしも階下まで排水や水などが漏れてしまうと、退去時の原状復帰のために、大掛かりな工事をしないといけないことになる可能性もあります。

フランスで物件を借りる場合、risques locatifsと呼ばれる日本でいう火災保険(家財保険)に入ることが義務付けられています。水の被害だけでなく火事や爆発の場合もこの保険が使えます。

ただし、隣人などが原因の場合にも使えるものはオプションですので、ご自身に合ったものを選びましょう。

火災保険にしっかり加入しておくことは当然ですが、日頃から水に関しては日本以上に気を付けるべきだと思います。何しろ、フランスの建物は、たとえ浴室であっても、床に水を流してよいようには造られていないのですから。

火災保険加入義務に関する詳しい情報は、こちらのフランス政府の公式サイトよりご覧ください。

部屋探しのヒント

タワー

パリでの家探しは、他の都市以上に競争率が高く本当に大変です。内覧会までたどり着ければまだいいほうで、そこまでいけないことが多いというのが悲しい現実です。たとえ運よく内覧ができたとしても、グループ見学の後にお声がかかることはまずありません。

また、外国人の私たちにとっては、保証人の問題があったり、言葉の問題があったりとさらにハードルは高くなります。

値は張るが邦人向けやメンバー制も

そこで、日本人向けの不動産会社を利用するという選択肢もあると、覚えておいて損はないと思います。物件の価格や手数料は若干高めですが、ライバルの数が少ないというメリットはあります。

また、メンバー制のところに登録してみるのもいいかもしれません。登録料はかかりますが、保証人がいらない場合もあるなど、外国人にはありがたいメリットもあります。

インターネットの掲示板だけでなく、学校の掲示板など自分が通っていない場所でも見に行ってみてもいいと思います。とにかくアンテナを張り巡らせて、知り合いにもどんどん声をかけてみてください。きっと誰かが何らかの情報をくれます。

時期をしっかり見極めて

9月は入学シーズンなので、この時期に家探しをするのは遅すぎます。もし、9月にスタートする学校や仕事があるなら、できるなら夏前に住むところを決めてしまったほうが安心です。

というのも、夏の間に渡仏しても、パリジャンやパリジェンヌたちはバカンス中。いるのは外国人観光客ばかりなので、家探しはできないと思っておいたほうがよいでしょう。

部屋選びのポイント

鍵

さあ、だんだんフランスでの家探しのイメージが湧いてきましたか?実際は、借りられるだけでもラッキーと思えてしまうぐらい、パリでの家探しは大変なのですが、ここで部屋選びのポイントを何点かご紹介しようと思います。

家賃

まず家賃ですが、フランスでは収入の3分の1以上の家賃は認められていません。つまり、自分の収入によって借りられるアパルトマンの上限が決まります。たとえ気に入った物件でも、選ばれない候補者とわかっている場合は時間の無駄ですので、ほかをあたりましょう。

立地 その1 治安のよさ

フランス、特にパリは、治安のよくない地域があります。だいたいそういった地域のほうが家賃は安いのですが、避けられるなら避けたほうがよいと思います。治安の良し悪しは、その地域を歩けばなんとなく感じられるものです。

まわりがしていることは自分には関係のないことだ、と思うのは少々危険です。自宅近くの道でトラブルに巻き込まれたり、車が燃やされたりすることは、自分の身にもかかわる可能性があるからです。

高級住宅街に住む必要はありませんが、それなりの場所を選んだほうが安心でしょう。逆に高級住宅街では空き巣に狙われるかもしれませんので、そのへんは自己責任で、ご自身が安心して暮らせる地域を選んでください。

立地 その2 生活の利便性

やはり通勤通学に便利かどうかがポイントです。私の場合、あちこちのキャンパスを移動するために、いろいろな路線の地下鉄や鉄道を利用する必要があり、複数の路線が利用できるかどうかは重要なポイントでした。

また、買い物ができるかどうかも大切です。日曜日や深夜に開いているコンビニがないフランスでは、平日仕事や学校帰り、もしくは土曜日に買い物をする必要があります。近くにスーパーがあるかないかで住む場所を決めるというのも、フランスでは大切かもしれません。

1階と最上階は避ける

セキュリティーの項でも書きましたが、家までの扉の数は多いほうが安心だと思います。もちろん、数が多ければ安心と言うわけではありませんが、手間がかかる場所は狙われにくいものです。

建物の1階と最上階は空き巣に入られやすいため、セキュリティー面ではおすすめできません。フランスでは屋根から屋根へと建物伝いに移動することが可能なので、最上階は1階と同じぐらい気を付けるべき場所です。

オフィスや店舗入居の是非

同じ建物に診療所や事務所などが入っていて、不特定多数の人が日頃から階段や廊下を行き来する場合はメリットとデメリットが。

  • メリット:いつも人の目があるため、空き巣に狙われにくい。事務所なら、そのうち顔見知りになるので、見知らぬ人が入ってきた場合すぐわかる。
  • デメリット:入り口のデジコードの暗証番号を知っている人が多くいるため、バカンス時で人目がない場合のセキュリティー機能が役に立たない。

これに関しては、建物によっては診療所や事務所だけ、インターフォンを鳴らすと内側から扉を開けることのできるシステムになっている場合もありますので、気になる方は必ず確認しましょう。

屋根裏部屋人気の不思議

部屋

映画の影響か、フランスのアパルトマンというと屋根裏部屋のイメージがあるかもしれません。私は実際に住んだことはありませんが、住んでいた友人たちの部屋を少しご紹介します。

狭くて暗い

エレベーターのある階から細くて狭い階段を上り、たどり着いた最上階の部屋は、斜めになった天井の窓があるだけでうす暗く、昼間でも電気が必要。広さは通常10~15平方メートルぐらいでしょう。18平方メートルあればとても大きな屋根裏部屋です。

どこも天井が斜めなためまっすぐ立って歩ける場所も限られている、かなり圧迫感のある部屋でした。部屋が狭く天井が低いため、家具もほとんど置けません。

しかも、夏はサウナのようで、冬は寒いのだとか。中にはトイレやシャワーが廊下で共同という屋根裏部屋もあります。また台所は流しの脇に電気コンロをひとつ置ければいいほうです。冷蔵庫を廊下に置いている人もいました。

唯一のとりえは眺め

高級住宅街の元女中部屋を改装したであろう部屋は、個人的には今の時代の日常生活を送るにはかなり不便なように思いました。それでも屋根裏部屋が人気なのは不思議です。ひょっとすると眺めがいいからかもしれません。

いろいろご紹介しましたが、以上のことを考えあわせ、自分には何が一番重要なはずせないポイントかを熟考した上で家探しをしてください。

最後に

慣れない国で、慣れない言葉で、慣れないやり方で家探しをしなければならないのは本当に大変です。地方都市ではできる内覧も、パリではなかなか難しいのが現実です。

住むところがないと新生活のスタートを切ることは本当に大変なので、日程に余裕を持って家探しをすることをおすすめします。もしくは、「最初の月はホテル住まいをしてもいい」ぐらいの気構えでいたほうがいいかもしれません。

これからのフランスでの生活の基盤となる住まい。ご自分にぴったりのアパルトマンが見つかるといいですね。