モンテッソーリ教育をご存知ですか。ここ最近は、将棋の藤井聡太さんがモンテッソーリ教育を受けていることで注目をあつめました。その他にも、オバマ大統領やビル・ゲイツさんも同じ教育法で育ったということから、英才教育として人気が高まっているようです。
シンガポールでは、日本よりモンテッソーリ教育を採用している幼児教育機関が多いのですが、日本との違いはあるのでしょうか。シンガポールでいくつかモンテッソーリ幼稚園と教室へ見学にいき、実際に雰囲気をみて感じたことをお伝えします。
モンテッソーリ教育概要
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、イタリア人女性医師であるマリア・モンテッソーリによって確立された教育法です。この教育法の特徴は、子供の自立をうながし、自ら学び続ける姿勢を身につけながら成長できるところです。問題解決能力が優れ、根気強く1つのことに取り組む力を強化できます。
日本でも、モンテッソーリ幼稚園や幼児教室が増えているので、この教育法を選びやすい環境になってきています。
しかし、小学校はありません。インターナショナルスクールとフリースクールがインターネット検索で出てきますが、いずれも通常の公立の学業と異なる形態で、気軽には入学を検討できないかもしれません。日本では、幼少期の人間教育として主に用いられている印象を受けます。
シンガポールのモンテッソーリ教育
シンガポールでも、モンテッソーリの教えに基づいた方法で、モンテッソーリの教具を用いて行われます。
よく幼稚園で見受けられるプログラムが、自由時間を利用して、モンテッソーリ教育法を取り入れているところです。教具が棚に並べて置いてあり、自由時間になると、子供は自分の興味に応じて好きな教具で集中して遊びます。
しかし、幼稚園の方針によっては、2~3時間の枠の中で、子供を1~2人ずつ呼び出し、順番でモンテッソーリ教具を使用する時間を設けているところもあります。
より集中できるし、先生たちが一対一できめ細やかに対応できるので、子供によってはこうした園の方が効果が大きいかもしれません。
ただ、いずれのスタイルを取っている幼稚園でも、シンガポールはどちらかというと幼児教育の面を強くアピールしているという点が日本と異なります。
日本との違い
日本でモンテッソーリ教育を取り入れてる幼稚園を調べてみると、自ら学び続ける姿勢を身につけることや、問題に対処する考え方の強化を意識した、モンテッソーリの理念を大切にしているところが多いようでした。
シンガポールでも、もちろんそうした理念に基づいて子供の教育を行っているのですが、どちらかといえば算数や英語といった具体的な教科の力を伸ばすためにモンテッソーリ教具を取り入れているところが多いです。
当地では、小学校卒業テストの結果で入学可能な中学校が決まり、その時点でエリートになれるかどうかが決まります。
つまり、小学校高学年の時点で、大学に行ける子と、そうでない子がほぼ決まってしまうのです。そのため、早期教育にとても熱心で、落ちこぼれないようにと、小学校低学年でも猛勉強するのが当たり前です。
幼稚園も、みな18ヶ月や2歳から入園させ、早くから多くの経験を積ませています。幼少期から勉強をはじめていかないと、差がどんどんひらいてしまうそうです。
エリートを目指して幼稚園に通う子供たちは、幼くても容赦なく苦手科目を指摘されるので、克服させるために習い事を増やすなどして親も熱心に教育を行っています。
こうしたシンガポールの教育事情により、当地のモンテッソーリ幼稚園では、知育の面を強調して宣伝している印象をうけました。
シンガポールのモンテッソーリ幼稚園
シンガポールでは、モンテッソーリ幼稚園が島内各所で見つけられます。そのため、日本より比較的容易にモンテッソーリ教育を行なっている幼稚園を探すことができます。
Pink Tower Montessori(ピンク・タワー・モンテッソーリ)
ピンクタワーとは、モンテッソーリの代表的な教具で、積み上げたりして使う木製の立方体教具です。その教具に由来しているのか、モンテッソーリを感じられる園名も魅力の1つです。
カトン地区にあるので、イーストの人向けではありますが、8ヶ月から2歳半の親子クラスもあります。
Brainy Child Montessori(ブレイニー・チャイルド・モンテッソーリ)
シンガポールの中心地、サマセット駅にある幼稚園です。幼稚園とは別に、1歳半から2歳半の親子クラスも土日に開講しています。親子クラスでは、第1週目はフォニックスで第2週目は算数というように、1ヶ月の間でも異なる科目を楽しめます。
別の幼稚園に通っている子でも、フォニックスや算数のレッスンを受けることができるので、子どもの興味に合わせて勉強のカリキュラムを組むことが可能です。
Modern Montessori International(モダン・モンテッソーリ・インターナショナル)
通称MMI(エム・エム・アイ)と呼ばれています。島内に同系列幼稚園が20以上も点在しているので、お住まいの地域内に、最寄りの園を1つは見つけられることでしょう。
自由時間内に生徒を順番に呼び、先生が見守り補佐をする中で、モンテッソーリ教具を使って学ばせるスタイルです。日常の生活面においても、モンテッソーリの理念を比較的忠実に取り入れている幼稚園なので、典型的なモンテッソーリ教育の幼稚園に興味がある人にはおすすめです。
子供の興味に合わせた教具を使い、学習進行状況も先生が把握できているので、親も子どもの成長を知ることができて安心です。
Arts Junior Montessori(アーツ・ジュニア・モンテッソーリ)
セントラルに近いクイーンズタウン・エリアに位置する幼稚園です。モンテッソーリ教具に特化しているわけではありませんが、モンテッソーリの教材を用いて教育理念を生活に取り入れています。
合気道やバイオリンなどを学ぶ時間も設けられていますし、日本語もカリキュラムに含まれている園なので、日本人向きのモンテッソーリ幼稚園です。
モンテッソーリ教具を多用しているわけではありませんが、幼少期から1人で日常のことをし、責任感を持ってものごとを行なっていけるようにと、モンテッソーリの理念を取り入れた教育を行っています。
シンガポールのモンテッソーリ教育の教室
幼稚園はまだ必要ない子どもや、モンテッソーリではない幼稚園にすでに通っている子どもには、モンテッソーリの教室がおすすめです。
たとえば、前述したPink Tower Montessoriは3歳から9歳向けのフォニックス・リーディングと算数の教室を開講しています。また、Brainy Child Montessoriにも3歳半から6歳向けのフォニックス(平日と休日クラスあり)と算数(土曜日のみ)の教室があります。
フォニックスや算数をモンテッソーリ式に習得してほしい場合は、教室へ預けてみるのも良いでしょう。
ちなみに、定期的な教室以外だと、スクールホリデー期間中のホリデー・プログラムを利用するのも良いと思います。
普段はモンテッソーリ教育の幼稚園へ行かせていない場合でも、ホリデー期間中にモンテッソーリへ触れさせることができるので、興味がある人はぜひ各幼稚園に問い合わせてみましょう。
気軽にモンテッソーリ教育をはじめてみよう
シンガポールには、日本よりモンテッソーリ幼稚園が多いので、気軽に選びやすい教育法です。
自立心を持った自ら考えられる人になるようにと、幼稚園の日常生活をモンテッソーリ理念に基づいているところが多く見受けられますが、幼児教育に熱心なシンガポールでは、数字やアルファベットなどの基礎知識強化にモンテッソーリ教具をとりいれている幼稚園もたくさんあります。
一概にモンテッソーリ教育といっても、早期教育目的で幼稚園へいれるのか、集団での日常生活に慣れさせる目的で入れるのかによっても、選び方が大きく左右されることと思います。
子どもと一緒に見学へ行き、雰囲気や1日のプログラムをきちんと確認し、どのような面でモンテッソーリ教育を活かしている幼稚園なのか確認すると探しやすそうですね。