最近では、日本でも英語の重要性が見直され、英語教育に力を入れる教育機関が増えてきました。シンガポールもビジネスにおける共通語は英語ですし、当地の教育機関も、英語と中国語のバイリンガルを目指しているところがほとんどです。
しかし、海外在住の友人や知人に話を聞いてみると、外国に住んでいるからこそ、子供にはきちんとした日本語(母国語)を身につけてほしいと考える人が多いことに気がつきました。
そこで、今回は幼児期にシンガポールで日本語教育ができる機関について調べてみました。ご参考になれば嬉しい限りです。
シンガポールの学校制度
言語学習に関して述べていく前に、まずはシンガポールの学校制度についてお話しいたします。当地では、学校の種類がローカル校とインターナショナル校に大きく分けられます。
ローカル校は、シンガポール政府の教育方針に沿ったカリキュラムを採用していますが、インターナショナル校はIB(国際バカロレア)やモンテッソーリ法などの教育法を独自に取り入れたりしています。
お子様の性格や学びたい内容によって学校選びを進めていけるのがインターナショナル校の醍醐味とも言えます。
ローカル校
ローカル校の場合、幼稚園、小学校、中学校と進み、ジュニアカレッジを経て大学(あるいは専門学校)、就職と進んでいきます。
ただし、中学校から専門学校へ進む人や、就職を早くからする人もいます。なので、基本的には中学校以降から、個人の能力や学力によってある程度方向性が見えてきてしまうのが特徴的です。
その年の定員によっては、運が良ければ外国人でも入学することができますが、ローカル校は基本的には国民のための学校です。そのため、多くの外国人はインターナショナル校を選びます。
インターナショナル校
インターナショナル校は、母体となる国に準じた学年区分を採用していることがほとんどです。日系の学校はインターナショナル校扱いで存在しており、他のインターナショナル校と同様に、母国となる日本と同じ学年区分を用いています。
しかし、幼稚園や保育施設(チャイルドケア)に関しては、ローカル校や日系以外の他のインターナショナル校に合わせて、1年間を1月はじめで4学期に区切るターン制を採用しているところがほとんどです。
ちなみに学校選びの際には、日英中のトリリンガル教育を受けさせるのか、あるいは英中/日英のバイリンガル教育を受けさせるのかによってお子様の方向性を左右します。
もちろん園の雰囲気も大事ですが、言語学習の面においては、各機関の教育方針をよく確認することが重要となってきます。
必修の言語と選択可能な言語
ローカル校においては英語を第1言語とし、第2言語として中国語かマレー語が必修になります。インターナショナル校も、基本的には英語を共通語として採用し、第2言語として中国語を学ばせているところが多いようです。
ただ、ローカル校もインターナショナル校も、申請をすれば中国語以外の言語を第2言語として選択させてもらえるようです。学校に各種手続きの確認をしなくてはなりませんが、小学校以降は英語と日本語を両立して学ばせる環境も実現することが可能です。
しかし、幼稚園やチャイルドケアに通う幼少期は、言語選択制のところは限られており、基本的には英語と中国語を園の方針に沿って学ぶこととなります。
幼少期は多くの言語を耳にいれ、その音に慣らすことは将来の言語学習に効果的です。また、これからの社会は英語が話せると有利かもしれません。しかし、英語メインの生活に慣れてしまい、日本語が不得意になってしまうお子様がいるのも事実です。
また、言語変化への対応がストレスに感じる子もいますし、言語に適応しようと頑張る子供の中には、過剰に周りに合わせようと意識した結果、消極的な性格になってしまう子もいます。
もちろんお子様の性格によるところも大きいので、それぞれに合わせた選択をしていくことが重要ですが、少しでも子供の負担を軽減し、楽しくバイリンガルを目指せると良いですね。
日本語も学べるインターナショナル幼稚園
幼稚園の場合、ローカル校では英語がメインで中国語が第2言語として必修とされます。どの程度中国語に重点を置くかによって、多少プログラムに特徴を出しています。
インターナショナル校は母体の国によって左右されることが多いのですが、幼稚園では英語と中国語を学ぶところが大半を占めます。
トリリンガルも目指せるので、言語に興味のあるお子様なら積極的にローカル校や英語圏(あるいは他の言語圏)が母体のインターナショナル校にいれてあげることをおすすめします。
一方では、私の娘もそうなのですが、言語に対して消極的な子は、英語だけでもストレスを感じるので、さらにもう1つの言語ともなると余計混乱してしまう可能性があります。そのため、心配があるようでしたら日系インターナショナル幼稚園という選択も良いかもしれません。
日系インターナショナル幼稚園は、日常使用言語が日本語メインのところもあれば、英語がメインではあるが日本語の時間を設けているというところもあります。
まずは日本語の目標レベルを定めて、ある程度お子様の性格や方向性によって学校選びをしていくことが良いと言えるでしょう。
日本語学習の時間がある園
選択肢が多いと逆に悩んでしまいますが、まずはお住いの近くにある幼稚園やチャイルドケアを調べてみましょう。その中から、どの程度の割合で日本語を学べるのか、あるいは園の方針や雰囲気はどうなのかをみて、じっくりとご希望に合うところを探していきましょう。
ARTS KIDS INTERNATIONAL(アーツ・キッズ)
絵画や書道、ヴァイオリンなどの芸術教育に力を入れ、自然と触れ合う時間を持つことで、アートと自然の調和を大切にしている園です。
保育言語は英語ですが、第2言語を中国語、日本語、韓国語から選ぶことができます。第2言語の時間は毎日あるため、英語と日本語のバイリンガル学習が可能となります。
EIS(イーズ)
子供の自主性を大切にする自由な校風で知られています。日本の文化教育を大切にしているので、日本語での読み聞かせの時間もあり、日本人としての感性も磨くことができます。
保育言語は英語ですが、日本人保育者がしっかり補佐をしてくれているので、安心して英語の環境に慣れていくことができます。
KINGSTON HOUSE(キングストン・ハウス)
ヨガを取り入れたりするなど、運動能力の発達も大切にしている園で、子供の可能性を引き出す、楽しいプログラムだという印象受けました。
日本人の担任に、英語・中国語話者の副担任をおいているので、自然にトリリンガルな環境を実現しています。
その他
上記にあげた園以外にも、ARTS JUNIOR MONTESSORI(アーツジュニアモンテッソーリ)は、英中日の3言語を大切にしているので、英語がメインですが、日本語話者との時間もあります。
また、英語と中国語がメインではあるものの、CHILDREN‘S COVE(チルドレンズコーブ)では週に2回日本語クラスがあります。
日本語重視の園
多言語取得も、子供の将来に利点が多いとは思います。それでも、やはり日本語をきちんと学んでほしいという場合には、日本語を重視している日系インターナショナル幼稚園がおすすめです。
KIDZROO&MAMAROO(キッズルー・アンド・ママルー)
日本人と外国人の複数担任制の園です。日本語の先生がきちんとサポートしてくださるので、安心して母国語強化がはかれます。また、その上で英語に触れることもできるので、子供への負担も少ないように感じます。
さらに、日本の季節にあわせた文化体験も大切にしているので、シンガポールにいながら日本の行事に慣れ親しむこともできます。
日本人幼稚園
日本とほとんど変わらない教育環境で育てることが可能です。毎日英語タイムがありますが、楽しみながら学べるプログラムになっています。
それ以外の園生活では、日本人の先生による保育環境なので、母国語強化を徹底したい方には嬉しい幼稚園です。
いろは幼稚園
日本人と外国人の2人担任制ですが、日本語に重点を置いています。英語のプログラムも充実していますが、日本人に合わせたカリキュラムなので、無理のない英語学習を可能にしています。
シンガポール観光や文化体験ができる、保護者向けのツアーを行なっているので、親も楽しめる園ですし、体育教育をきちんと行なっているので、子供が思う存分のびのびとできる園です。
このはな幼稚園
日本人と外国人の複数担任制なので、英語が苦手な子でも安心して園生活を送れます。バイリンガル教育をすすめていますが、あくまで第1言語は日本語としているので、母国語を大事にしながら、第2言語として英語も習得していくことができます。
ひまわり幼稚園(アーツ・キッズのグループ園)
完全に日本と同じような日本語の環境下で生活ができる幼稚園です。英語は後で学ばせたい方や、英語は外の習い事や、家庭内でゆっくり習得させたい方におすすめです。
外国にいながら、日本の作法や文化を自然と身に付けることができる貴重な園です。
その他
上記以外にも、英語に触れながら日本語も重視してくれるCOCOーRO LEARNING HOUSE(ココロ・ラーニング・ハウス)などもあります。
お住まいの地域から通いやすい幼稚園やチャイルドケアをリストアップして、ご家庭で希望を話し合い、お子様に合わせて園選びができると良いですね。
習い事で日本語強化
無理なく通園できる範囲内に日本語を取り入れている園がないような場合や、その他の理由で別のインターナショナル園/ローカル園を選ぶことになったご家庭もあるでしょう。
しかし、当地には幼児向けの日本語教室や、日本語で学べる習い事もあります。お子様の興味に合わせて、幼稚園とは別に何か習い事を始めてみるのも楽しいかもしれませんね。
こどもくらぶ
1歳から年長さんまでの日本語コースがあります。また、小学生向けには、国語と算数の塾を開講しています。日本語で学べる貴重な幼児向けの教室ですし、場所も中心地のオーチャード・エリアなので便利です。
空席待ちのクラスもあるようですが、体験教室(有料)は随時受けているとのことなので、ご興味のある方はぜひお問い合わせしてみてください。
ハッピートレイン
二か国語(英語・中国語)習得を目指す教室ではありますが、日本語教室も開講しています。
3ヶ月から6歳向けのコースがあり、保護者同伴のプログラムなので、子供も安心して学習することができます。体験教室(有料)も行なっているので試しに一度いかがでしょうか。
KINGSTON HOUSE(キングストン・ハウス)の体操教室
日英中のトリリンガル教育を実現している幼稚園、KINGSTON HOUSE(キングストン・ハウス)で開校している体操教室。なんと元サーカス団パフォーマーの方が先生です。日本人なのでレッスンは日本語で受けられます。体を動かすことに興味のあるお子様は楽しめそうです。
その他
上記以外にも日本人向け、あるいは日本語の教室がありますので、インターネット検索や近所の散策などをして、積極的に情報収集してみるのも楽しいです。
ちなみに、習い事は土日にレッスンがある場合がほとんどです。1歳から3歳くらいまでの幼児向けクラスは、平日に開講しているところもありますが、半日保育の子供向けに、15時から19時台に組まれていることが多いです。
日本人のお友達を増やしてあげよう
毎週の送り迎えがおっくうだったり、子供が習い事を嫌がる場合は、日本語力強化のために日本人のお友達を増やすのも一つの手です。
プルチーノ
ママ友を増やしたい方や子育てに関する情報交換をするのに最適のグループです。プレママ向けの集まりもありますが、0歳児から未就学児までの子が参加できる親子交流の会もあります。
特にシンガポールに来て間もない方は、生活のことも聞いたりできるので、安心できそうです。
シンガポールおでかけグループ
一人歩きができるようになってから、就学前の子供が集まるグループです。
グループ名の通り、おでかけして遊びます。頻繁に集まりがありますが、予定の合う人が2人以上いる場合に連絡ツールを利用して遊びに行く計画をたてます。出られるときだけ参加すればよいので気軽に加われます。
シンガポールお役立ち掲示板/シンガポール掲示板
生活情報やフリーマーケットページ、お友達募集情報などが掲載されているインターネット上の掲示板です。いきなりグループに加わるのが不安な方や、友人を徐々に増やしていきたい方は、ママ友募集と題して掲載してみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、私もこの掲示板で連絡を取ってみたことがきっかけで多くのママ友をつくることができました。意外とママ友募集を掲載している方もいらっしゃるので、こまめにチェックすると面白いです。
まとめ
幼い頃から外国語を耳にする機会があるというのはとても素晴らしいことです。聞き取れる耳を持っていれば、会話を聞き取れますし、発音もよくなります。なので、幼少期からできる限り多くの言語に触れさせたいというのは多くの親の願いでもあります。
しかし、言語に消極的な子供の場合は、やはり多言語の輪に入るのがストレスになるのも事実です。
母国語を強化した上でバイリンガルやトリリンガルを目指していこうと考えるのであれば、日系インターナショナル幼稚園を吟味してみたり、または習い事やお遊びグループで、日本人のお友達を増やすのを試してみると良さそうです。