フィリピンの言い訳文化とは?今でも忘れられない印象的な言い訳

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フィリピンに暮らし始めると気づくことがあります。それはフィリピン人は非があってもなかなか謝らず、必ず何かしらの言い訳をすることです。これは私が1番苦手と思うフィリピン人の特徴です。

フィリピン人と付き合いがある人は、1度や2度はフィリピン人の言い訳にうんざりしたことがあるのではないでしょうか。

フィリピンでの生活が長くなると言い訳文化にもだいぶ慣れてくるのですが、時にとんでもない言い訳を聞くこともあります。ここでは忘れられない印象的な言い訳を紹介します。

お腹にスプーン

スプーン

私の友人Sの家で働くメイドさんのお話です。Sの家には姉妹のメイドさんが2人働いていました。おとなしくて働き者で、その上給料の前借も借金もしない、お金にクリーンなメイドさんでした。

近所の日本人の奥さんたちからはとても羨ましがられていました。みんなメイドさんやドライバーさんの前借と借金に悩まされていたからです。

そんなSのメイドさんたちにもお金を借りたい日が来ました。おとなしい彼女たちが必死でお金を借りる理由を考え出したのです。ある日Sの前で姉妹が泣きながら言ったそうです。

「妹のお腹の中には小さい時に飲み込んでしまったスプーンが残っていて、取り出さなくてはいけないのにお金がなくてずっと手術を受けられなかったのです。最近お腹の痛みが増して、早く取り出さないと命に関わると医者に言われました。どうか給料を前借させてもらえないでしょうか。」

それを聞いた人のいいSは「大変じゃない!すぐに取り出さなきゃ!帰ってきたら主人に相談するわね。今日はもう横になってなさい。」と驚きを隠しきれない表情で言いました。Sはどうしたらいいのか、アドバイスを求めてフィリピン在住歴の長い友人に相談しました。

友人:「まさかその話信じていないでしょうね?」

S:「本当です。嘘をつくような子たちじゃないんです。痛くて辛そうで、どこの病院がいいのかと思って……」

友人:「まずレントゲンの結果を見せてもらったら?」

S:「いや、今すぐにでも手術が必要なのよ。」

友人:「じゃあ、手術を一緒に立ち会うって言ってみて。お金を直接病院に払ってあげればいいんじゃない?」

その友人は明らかに懐疑的でした。Sは「そうね。病院に付き添うわ。」と言って、メイドさんたちのもとに戻っていきました。それを彼女たちに話すと、そわそわし始め「まず親戚からお金が借りられないか先にあたってみます。」と答えました。

メイドさんたちはそれからSにお金を借りることはなく、数日休んだ後に「手術無事おわりました!」と言って戻ってきたそうです。

Sは「嘘だったんだぁ。お腹にスプーンって聞いてびっくりしたわ。すごい言い訳を考えるのね。」と笑っていました。

究極の言い訳

家事

私がフィリピンにきて最初に付き合った彼氏は言い訳大魔王でした。2年弱付き合いましたが待ち合わせの時間に来たことは1度もありません

「渋滞にはまって」「出かけに電話がかかってきて」「急に用事を頼まれた」など延々と言い訳をして、絶対に謝りません。彼の中では彼が悪いのではなく、悪いのは渋滞であったり、かけてきた電話の相手なのです。

会った早々言い訳を聞かされていつもデートは最悪な気分からスタートでした。言い訳癖はもう直らないとわかってから、「ふーん。あ、そう。」と適当に流して怒ることをやめました。そうすると言い訳もどんどん雑になってきて、なんでもかんでも言い訳にするのです。

私:「2時間も遅刻だよ。なんでこんなに遅いの?」

彼氏:「仕方がないだろう。火事があったんだから。」

私:「え、大変じゃない!家はだいじょうぶなの?」

彼氏:「俺の家じゃないよ。ここに来る途中にある家で火事があった。」

私:「火を消すのを手伝ってたってこと?」

彼氏:「いや、見てただけ。」

私は何の言い訳を聞かされているのでしょうか。彼はあくまでも真顔で言います。思わず「ふっ。」と鼻で笑ってしまいました。その次のデートも当然遅刻をしてきました。

私:「一応聞くけど、今日はなんで遅刻してきたの?」

彼氏: 頭を抱えながら「妹が妊娠したんだ……」

遅刻と何の関係があるのでしょうか。100歩譲って妹の妊娠がショックだったとしても、それはそれ、遅刻は遅刻、まったく別物です。彼は「俺の気持ちがわからない」と少々ご立腹のようでしたが、わからなくて結構と思ってしまいました。

彼のエンドレスな言い訳を聞き続けることは私には無理でした。2年を待たずに彼との関係は終わりました。

犯罪も許される!?

銃

フィリピンでは殺人事件が多発していて、その件数も日本の10倍だそうです。日本人が事件に巻き込まれることも多く、この10年で40人程殺害されました。理由はほとんどお金が絡んでいるか怨恨かと思われます。

逮捕された殺人犯に「なぜ殺したのか。」と殺害理由を聞くと、「自分の正義に従って殺害した」や「神様の思し召し」と答える人もいます。人を殺めることは犯罪なので服役はするけれど、自分は神様の前では罪人ではないと主張するのです。

「正義」や「神様」を持ち出したら誰だって罪なき殺人犯になり得ます。「どうしてもお金が必要だった。」「殺さなければ、殺されていたかもしれません。」なんだって正義になるような気がします。フィリピンに行く方はトラブルに巻き込まれないように、重々気を付けてください。

イミグレーションの行列

ビザ

フィリピンに長期滞在する人が避けたくても避けられない場所がイミグレーションです。出入国を管理する重要な場所ですが、ここでも信じがたい言い訳を聞くとは本当に驚きです。

私がビザを延長するためにイミグレーションに行った際のことです。とても混み合うので朝早く家を出て、到着すると10人ほどいる列の1番最後に並びました。すぐに私の後にも長い列ができました。朝8時に開くので、あと5分少々並ぶことになります。

8時をちょっと過ぎたころ窓口に担当者らしき人が座りました。そろそろ開くかなと思っていると、その担当者は私たちの長い列を見ながら、朝ご飯を食べ始めたのです。そしてゆっくりと新聞を読んでいます。

列にいたアメリカ人らしき若者はすごく怒っています。ついにはその担当者に文句を言いに行きましたが、平気な顔で食べ続けています。

15分くらい経ってようやく窓口が空いたと思ったら、その担当者は中に引っ込んでいってしまったのです。すると奥の方から「ハッピーバースデー」の歌が聞こえてくるのです。

しばらくするとバースデーケーキの1切れを持って、その担当者が返ってきました。そのケーキを食べながらやっと仕事の開始です。時間も9時近くになっていました。

窓口の方から「今日は○○の誕生日だったから、ちょっと時間がかかっちゃたわ。」と話す声が聞こえてきます。悪いのは担当者ではないのです。誕生日会があったから、祝わなければならなかったのです。彼らの理屈ではこうなりますが、なかなか理解しがたい感覚です。

妊娠してません

妊娠

時にはおおごとになり、流石に謝ることもあります。

私がある日系の会社で日本語を教えていた時のことです。社員さんの中から1人日本に行って1年間研修を受けることになりました。選ばれたのは23歳の女性社員Lです。

この研修が上手くいけば、研修制度を拡大させてもっと多くの社員を日本の会社に送る予定でした。日本に行く日まで日本語を一生懸命勉強して、Lは大きな期待と責任を背負って日本に行きました。

2か月が過ぎたころとんでもない知らせを受けました。なんとLが日本で出産したらしいのです。Lは妊娠したことがばれてはいけないとずっとお腹をさらしでグルグル巻いていたのです。

周りの人が妊娠しているんじゃないかと聞いても、「いいえ、太っただけです。日本食がおいしくて。」とかわしていたそうです。でもその内お腹はどんどん大きくなりさらしを巻いても背中の方まで膨らんできて、とうとう倒れてしまったのです。でもその後無事出産。

気の毒なのは社長です。無駄になった旅費、違約金、日本でかかった病院代、それも保険がないので全部実費、もちろんすべて肩代わりです。働いて返すということでしたが、金額的に5年ぐらいはただ働きの計算になるので、実際のところ返済はできないでしょう。

せめて日本に行く前に妊娠していることを打ち明けてくれたら、事態はずっとましでした。ふだん謝らないフィリピン人ですが、さすがにこの件ではLは社長に謝罪したようです。「できちゃったものはしょうがないでしょ」という言い訳はあったようです。

まとめ

フィリピンに住み始めた最初の1年はフィリピン人の言い訳が嫌で嫌でたまりませんでした。未だに嫌なことには変わりがないのですが、上手に受け止めて適当に流すことができるようになりました。

真っ向からは受け止めません。考え方がこんなに違うのだから、自分の考え方を熱く語ったところで理解されることはないし、逆に熱くなっていることしか伝わっていなくて怒りっぽい人だと思われるのがオチです。

「渋滞に巻き込まれたから遅刻した」と言われたら、「渋滞に巻き込まれることも想定して家を早くでればいい」という期待はしないでおきましょう。待ち合わせ時間や開始時間は早めに設定するなど、違う方法で改善する必要があります。

フィリピン人のとんでもない言い訳をまともに受け止めないことがフィリピン人と上手くやっていくコツです。