ヨーロッパの長く厳しい冬が間もなく到来します。日の入り時刻も早く、中には冬の天候のせいで気分が滅入ってしまう人もいます。
そんな憂鬱な冬、スイスやその周辺の地域の人が楽しみにしているのがラクレットです。ラクレットはチーズフォンデュに並び人気がある、スイス伝統料理の1つです。ここ、ベルギーでもレストランで楽しむだけでなく、自宅で専用の鉄板ラクレットグリルを使って作る家庭も多いです。
今回は自宅でできるラクレットについてご紹介します。
※1ユーロ=128円(2019年)
ラクレット概要
ラクレットとは
直火やラクレットグリルという専用の鉄板で溶かしたチーズをじゃがいもやパンなどの具材に絡めた料理を「ラクレット(Raclette)」と言います。
もともとは「削り取る」という意味の“Racler”が語源となっています。スイス全土やスイス国境近くのフランス・サヴォア地方の伝統料理です。
日本でもラクレット専門店があったり、レストランや居酒屋のメニューの1つにもなっているようで、馴染みがある人もいるでしょう。
もともとはチーズの断面を直火で温め、溶けたところをナイフなどで削り、じゃがいもなどに絡めて食べていたそうです。
この際に使うチーズはスイスが原産のハードタイプです。クリーム色の断面に、ハードチーズでありながら中は柔らかく、チーズが苦手な人もこれならいけるのではないでしょうか。
ラクレットの味、におい
味自体はクセがなく食べやすいのですが、ラクレットチーズはかなり匂いが強いので注意してください。牧場の牛舎の香りや犬小屋の匂い、たくあんの古漬けの匂いなどと形容されています。
匂いが強いので食べるのを躊躇する人もいるかもしれませんが、熱して具材に絡めて食べると匂いは和らぎます。また、黒コショウ、パセリ、バジルなどの香草もチーズと合いますので、いろいろと試してみてください。
まずは、チーズとパンや野菜を絡めて一口食べてみると、硬いチーズが溶け、まろやかになったチーズが後を引きます。バゲットに絡めるもよし、野菜やエビ、ささみなどと合わせても美味しいです。少しチーズが焦げた香りもまたたまりません。
スイスのレストランでは目の前でチーズを溶かして、バゲットとじゃがいもを煮たものにかけてくれました。家では様々な具材を用意できるので楽しいです。
ラクレットグリル
私が住んでいるベルギーはスイスから離れていますが、ラクレットグリルやラクレットチーズが売られています。
こちらでは日本人が冬に鍋を家族や友人とつついて楽しむように、ラクレットグリルを囲んでわいわいしながら食べます。発酵食品であるチーズは体を温める作用があるので、みんなでグリルを囲み、チーズを食べることで体の内外から温まります。
そんなラクレットを手軽に楽しむために、ラクレットグリルという調理用鉄板が手頃な値段で手に入ります。
電化製品売り場に行くと並んでいますので、好きな大きさやタイプを選んでください。ネット販売でも手に入ります。安いもので35(日本円で約4480円)ユーロ、大人数用のプレートだと100ユーロ(日本円で約12800円)程度で手に入ります。
こちらの写真のように具材を焼くための鉄板がついたグリル本体、チーズを溶かすための小さめの金属鉄パンが付属しています。これらを使ってラクレットを作ります。
ラクレットのメリットとデメリット
※スイス、ジュネーブのレマン湖
スイス発祥のラクレットのメリットとデメリットをそれぞれ考えてみました。
ラクレットのメリット
体が温まる
チーズは発酵食品なので体を温める効果があります。それをグリルで炙りながら食べるわけなので、体が温まること間違いなしです。
準備がとても楽
チーズと具材を用意するだけで、みんなで楽しめるのでパーティ料理としてもおすすめです。具材は切って並べるか、下茹でをしておくだけなので主婦にとってはものすごく助かります。
ベルギーに遊びに来た日本人の友人にもふるまいましたが、とても喜んでいました。見た目に色とりどりの具材を用意すれば、豪華に見えます。
みんなで楽しめる
ベルギーではレストラン等などで食事をシェアすることはほとんどありません。何か1つの料理をみんなで楽しむことはありませんが、このラクレットは1つのグリルで作るので、なんだか一体感が生まれるような気がします。
ラクレットのデメリット
匂い
チーズの匂い自体が独特で強いものです。食べているときはその匂いは気にならなくなりますが、自宅で料理する際に覚悟しなければならないのが匂いです。チーズの匂いが部屋に染みついてしまい、一晩は我慢しなければいけません。
味付けが飽きる
味付けは基本的にはチーズだけなので、最初はいいですがチーズを食べなれていない日本人には、途中から飽きがきます。日本人でラクレットを囲む場合は、サラダや果物を用意しておくとよいかもしれません。
ラクレットのレシピ
材料
ラクレット用チーズ
ナチュラル、スモーク、ペッパー味などの種類があります。数種類用意すると飽きが来ません。写真の3種類のラクレットチーズが入ったパックは、700グラム分のチーズが入って10.95ユーロ(日本円で約1400円)で売っていました。
ナチュラルなチーズは日本の「とろけるチーズ」を濃厚にしたものをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。スモークはちょっと香ばしくてくせがありますが、次第に美味しいと感じるのではないでしょうか。また、ペッパー味はパンチがきいているので、お肉によく合います。
絡めるための具材
具材は一口大に切っておくと食べやすいです。ヨーロッパではじゃがいも、バゲットだけで延々とラクレットを食べるようです。スイスのレストランでラクレットを食べたときも、茹でたじゃがいもとバゲットしか出てきませんでした。
後はお好みでエビ、プチトマト、マッシュルーム、アスパラガス、パプリカ、人参、肉などチーズに合いそうなものを何でも用意しましょう。私はプチトマトとマッシュルームは必ず用意します。
作り方
- ラクレットチーズを、溶かすための鉄板に乗せるのにちょうどよい大きさに切ります。
- 絡めるための具材を用意します。じゃがいもや人参、アスパラガスなど下茹でが必要なものは準備します。
- ラクレットグリルの電源を入れて鉄板を温めます。
- 鉄板を温めたら、チーズを溶かします。
- 具材と絡めて、出来上がりです。
ラクレットプレートがあった方が食べやすいですが、フライパンやホットプレートでチーズを溶かして食べることもできます。
日本でラクレットを楽しむ方法
ヨーロッパでしかラクレットを楽しめないかと言われるとそんなことはありません。東京などにもラクレット専門のレストランが有るほか、自宅でも簡単に楽しむことができます。
ラクレットをする時にはたっぷりのじゃがいもを用意します。ちなみに、ベルギー人が教えてくれたのですが、写真のようにバターを少量入れて煮るとお湯が吹きこぼれないそうです。
チーズの種類
日本でもスーパーや輸入食材店でラクレットチーズを扱うようになってきているようです。また、デパートに入っているチーズ専門店でも店員さんに相談しながらラクレットチーズを選ぶこともできます。
近くにそういったお店がなく、ラクレットチーズが手に入らない場合は、ネット販売されているチーズをお好みで購入するとよいと思います。
丸い塊の状態の本格的なチーズより、スライスされている状態の物の方が家庭でラクレットをする場合にはより簡単です。ベルギーのチーズ屋さんでラクレットチーズを買う時も、スライスされた状態で購入します。
ラクレットチーズが手に入らない場合は、「とろけるチーズ」で試してみてもいいかもしれません。このとき、ちょっとだけチーズに焦げ目をつけるとより風味がでてラクレットチーズに近くなるのでは、と思います。
器具
日本でも、5000円程度でラクレット専用グリルがネット販売されているようなので、チーズ好きな方は用意されてもよいかもしれません。ですが、ホットプレートやフライパンを使って簡単にラクレットを楽しむことが出来ます。
フライパンやホットプレートの場合は具材を焼きながら、チーズを溶かし、チーズが溶けてきたら具材と絡めて食べてください。この時にあまり強火すぎたり、時間を置きすぎたりするとせっかくのチーズが焦げてしまうので注意してください。
オーブントースターを使ってもラクレットを楽しむことができます。まずはジャガイモなど野菜の下茹でをしておきます。野菜はお箸をさすと通るくらいに柔らかくなるまで茹でておいてください。鶏肉やエビなども別のお鍋で煮ておきましょう。良く火を通してください。
次に耐熱皿にバターやオリーブオイルなどを塗ってください。その上に野菜や鶏肉、エビなどをのせましょう。順番はジャガイモを一番下にしてその上に他の具材をのせていくとカラフルで見栄えがよくなると思います。私がオーブントースターで作った時はパンをのせずに作りました。
最後にラクレットチーズを満遍なくのせて、オーブントースターで5分程加熱してできあがりです。ちょっと焦げ目がつくくらいが美味しいです。
具材
具材は前述しましたように、じゃがいも、人参、アスパラガス、バゲットなど硬めのパンを用意しましょう。直接ホットプレートで具材を焼いてもいいですが、私は生でたべられない野菜等は事前に下茹でします。その方が、チーズが焦げ付く心配がないからです。
せっかくなので日本の食材をチーズと絡めても美味しいと思います。しいたけ、まいたけなどのキノコ類や魚肉ソーセージなどいかがでしょうか。
まとめ
もともとはスイスの伝統料理ですが、ベルギーやドイツなど広くヨーロッパで食べられているラクレット。とっても手軽にできて体も温まる冬にぴったりの料理。これで長い辛い冬を乗り越えましょう。
日本のように鍋で温まることはできませんが、「郷に入っては郷に従え」ということでヨーロッパ流の冬の過ごし方を楽しんではいかがですか。チーズも日本に比べると簡単に手に入ります。